バターはカラダにいい?(shutterstock.com)
近年、アブラに関する評価は一変してきた。従来の「カラダに悪いから制限を」から「積極的な摂取を」というものである。
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だが、一方では生物医学界を中心に、食品に含まれる“特定種の脂肪”が健康に及ぼす影響が問題視されている。一般人のネット書き込みや拡散も盛んで、さながら“犯人探し”のようだ。
その流れのなかで、新たな知見が示された。バターは巷間いわれているほど「不健康な食品」ではない――。この研究報告は6月29日、『PLOS ONE』(オンライン)に掲載された。
本論考の主著者である米タフツ大学(ボストン)栄養科学政策学部長のDariush Mozaffarian氏は、次のように話す。
「バターは決して“悪者”ではありません。今回のわれわれの研究で、健康を後退させる懸念はないことが判明したのです」
同氏らのレビューによると、バターを好んで食べる人では、死亡または心疾患のリスクの有意な上昇は認められなかったという。
今回の研究は、NHLBI(米国立心臓・肺・血液研究所)により助成されたものだ。具体的には9件のデータを対象とし、15カ国・63万6000人超を根拠とする解析が行なわれた。
アンチ派の節制論は揺るがず
対象者の1日当たりの平均バター消費量は、3分の1サービングから3サービング超までの幅がみられた。サービング(serving)は料理の単位、この場合のバター1サービングはティースプーン換算で約1杯分に相当するという。
ところが、この論考が公表されて以降も、バターを悪者扱いする意見は絶えない。栄養士で米クイニピアック大学(コネチカット州)スポーツ医学教授のDana White氏もそのひとり。White氏はこう述べる。
「私はバターに対する見方を変えるつもりはありません。バターは、極めて高カロリーかつ高脂質にして栄養素密度が低い食品。やはり厳しく節制すべきものだと考えています」
また、Mozaffarian氏らの報告掲載から1週間と空けずに、米医学誌上で発表された研究論文も、バター(=飽和脂肪酸)やマーガリン(=トランス脂肪酸)の摂取による早死リスクを問題視。植物性食品(オリーブオイル、菜種油、大豆油)の不飽和脂肪酸への代替えを提唱している。