Prince in concert on Tuesday, August 9, 2011 Northfoto / Shutterstock.com
4/21に米の人気ミュージシャン、プリンスが急逝した。享年57。
当サイトでもすでに第1報は出している。『謎が深まるプリンスの急逝 死因はドラッグ中毒か鎮痛剤常用の果てか?』
死の直前まで活発に活動していたためもあり、その死は世界に衝撃をもたらした。その後、司法解剖されるも、調査が長びいたため、なかなか死因がわからないでいた。
6/2、プリンスの検死結果がついに正式発表された。アメリカの芸能サイト、TMZが詳細を報じている。(http://www.tmz.com/2016/06/02/prince-cause-of-death-opioid/)
死因はあのフェンタニルの過剰摂取
記者会見を開いたミネソタ州のミッドウェスト検死事務所は、死因を「フェンタニルの過剰摂取によるもの」、「プリンス本人がフェンタニルを自己投与したことにより引く起こされた事故」と発表した。
報告書によると、死亡時のプリンスは黒いキャップ、黒いシャツにグレーのアンダーシャツ、黒いズボン、黒いボクサーブリーフ、黒の靴下というほぼ黒づくめの格好。死亡時の体重は112ポンド(50.8キロ)、身長は63インチ(160センチ)であった。
生前、彼はエイズやHIV感染の噂があった。しかし、報告では「死因となる他の重要な病状は見つからなかった」とされており、エイズ/HIV説は否定された。
プリンスの関係者は、急死する前日、カリフォルニアに住むオピオイド依存症の専門家、ハワード・コーンフェルド医師に緊急の往診を要請していた。予定がつかなかったハワード氏は、代理として自身の息子アンドリューをミネソタのプリンス邸へと派遣した。到着したアンドリューはプリンスが死亡しているのを発見・通報した。
ヘロインの混ぜ物としても有名なフェンタニル
フェンタニルとはどんな薬なのか。日本薬学会の薬学用語解説などを元に簡単だが説明してみたい。
フェンタニルはピペリジン系合成麻薬性鎮痛薬。注射とパッチ剤があり、麻酔や鎮痛、がん性疼痛などという用途で使用されている。薬理作用はモルヒネと同様であるが、その鎮痛作用は、モルヒネの100倍~200倍である。その分、毒性も強い。
チャイナホワイトという名称で、濫用薬物としても流通していることは過去の記事でも紹介した通り。『危険ドラッグに混在する合成麻薬「チャイナホワイト」の恐怖』
同量でヘロインよりも効果があることから、ヘロインに混ぜ物として混入しているとも言われる。
フェンタニルの効き目は、バイコディンはもちろん、パーコセットよりも強力で、日本では「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬に指定されているほどだ。許可なく輸入しようとしたり、所持したりすると犯罪となる。実際、この薬と同系統のオキシコドン密輸した容疑で、トヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務が昨年6月に逮捕され、辞任している。
副作用には、呼吸抑制、吐き気、嘔吐、眠気、多幸感、頭痛、鎮静、抑うつ、掻痒、発汗などがある。モルヒネに比較すると便秘、吐き気、めまいなどの副作用が少ないといわれている。
精神依存性、身体依存性、耐性があるため、アメリカではフェンタニルやパーコセットといったオピオイド鎮痛剤の過剰摂取が社会問題となっている。
アメリカ疾病対策センター(CDC)の調査によると、2014年度の死者は2万8647人。これは薬物中毒死者の実に6割を占めている。そのため、今年3月には、処方のガイドラインが公表されたばかりだった。
プリンスがフェンタニルを入手した先や投与期間などはいまだ不明である。
(文=編集部)