南京虫(トコジラミ)の被害が世界中で拡大(shutterstock.com)
日本政府観光局(JNTO)の累計では、今年の1〜3月の訪日外客数(総数)は575万2800人、前年同月比の伸率39.3%と絶好調ぶりが伺える。
2020年東京五輪を見据えた宿不足解消策として東京・大田区で特区民泊事業も始まったが、今回紹介する問題には、どんな国家戦略が取られるのだろうか?
「南京虫」という古くからの俗称もあまり聞かれなくなり、国内では数十年前に姿を消したともされてきたトコジラミ(英名:bedbug、学名:Cimex lectularius)。現実は消滅どころか、彼らの皮膚が厚くなり、むしろ進化に伴い、一般的な殺虫剤に対する「耐性」が高まっている可能性が濃厚だという研究報告が公表された。
この知見から、近年、欧米中心に拡がるトコジラミ被害の増殖理由を説明できるのではと耳目を集めている。
厚みが増して殺虫剤に負けない屈強さを得る
注目の研究結果は「PLOS ONE」(4月13日)に掲載された。研究著者であるシドニー大学(オーストラリア)のDavid Lilly氏はこう語っている。
「トコジラミが殺虫剤に対抗するために培った生物学的メカニズムを解明できれば、その防御の隙を突き止められる。その弱点が新しい対策に利用できる可能性は高いと思います」
トコジラミは、その名称に反して、シラミ目ではない。セミやアブラムシやアメンボなどと同じカメムシ(半翅)目に属する昆虫だ。他の昆虫と同様にクチクラ(角皮)と呼ばれる外骨格で覆われている。
Lilly氏らは走査電子顕微鏡を用いて、殺虫剤に耐性を持つトコジラミから採取したクチクラの厚さを検証。同様に耐性の低いトコジラミの外骨格も調べて、双方を比較したという。
その結果、殺虫剤を曝露された際、クチクラが厚いほど生存率が高い可能性を突き止めた。