「心は女なのに男部屋」「恋人の臨終に立ち会えない」……。医療機関の“LGBT”対応改善を急げ!

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カミングアウトできずに病気が悪化

 LGBTの中でもとりわけトランスジェンダーにとって医療の壁が高いのは日米共通のようだ。性別が書かれている保険証を出すことや、人前で本名を呼ばれることへの抵抗感から受診をためらい、病気を悪化させてしまう例も少なくないという。

 またパートナーが同性の場合は、手術の同意書にサインができない、臨終の立ち会いを認められないなどのケースもある。

 昨年7月、ニュースサイト「SYNODOS 」に、女性の体で生まれたが心は男性のトランスジェンダーである遠藤まめたさん(29歳)が、免疫系の難病を患って入院した際の体験を記している(「LGBTが病気になると……」)。

 遠藤さんは、入院当初は病状が重く、入院生活に不安があってもカミングアウトをする体力と気力がなかったという。

 しばらくして「認可薬は不妊のリスクがあるから」と、医師から月6万円の高価な未承認薬を薦められたとき、「子どもを産むつもりはないから認可薬で大丈夫」と言ってもなかなか理解されなかった。そこでトランスジェンダーだと打ち明けると、すぐに認可薬が使えるようになったという。

 これは主治医にLGBTの知識と理解があったために、スムーズに事が進んだケースだ。しかし、もしカミングアウトができなければ、あるいは医師が理解してくれなければ、数十万円の負担増になるところだった。

 「LGBTは二重のマイノリティーになりやすい」と遠藤さんは指摘する。

 日本ではまだまだ、LGBTに対応できる医療機関や、医療従事者が増えているとは言えない。医療従事者へのカリキュラムの中で、ジェンダーやセクシャリティーの教育にしっかり時間をかけている学校はほとんどないからだ。

 近年はLGBTに関する知識や彼らのニーズを知らしめるために、医療者、教育者向けの本や冊子が何冊か出版されている。しかし書籍レベルではなく、養成時の教育カリキュラムを見直し、現場には研修を義務づけるなど、公的な対策を急ぐ時期に来ているのではないだろうか。
(文=編集部)

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