狂犬病ワクチンを接種している登録犬は71%(shutterstock.com)
犬を飼っている人にとって、春は狂犬病ワクチン注射の季節。愛犬家の皆さんは、もう予防接種を済ませただろうか?
この時期に、動物病院や臨時会場で、愛犬に狂犬病ワクチンを注射させるのは、すべての飼い主に義務づけられる毎年の恒例行事だ。実際、約20年前の平成5年までは、全国の99%の犬(登録犬)が予防接種を受けていた。
しかし、ここにきて異変が起きている。平成26年には、なんと71%の犬しかワクチン接種していないのだ。しかもこれは、狂犬病予防法にのっとって登録された犬の割合。自治体に届け出をしないまま飼育されている未登録の犬が、全国に300〜400万頭以上いると推測される。
実数としては、日本国内の半数以上の犬が、狂犬病予防をしていないと思われる。
「狂犬病? 昔の病気でしょ」「もう日本にはないでしょ?」「犬の病気でしょ?」と思う人は少なくないだろう。また、「愛犬の体に負担(副作用など)をかけたくない」「終日家の中で過ごし、ほとんど外へ出ないから必要ない」と言ってはばからない飼い主もいる。
これは専門家から見たら、大変恐ろしい事態である。日本では撲滅し、今や廃れたと思われがちな狂犬病だが、実はそう遠い存在ではない。
年間5万人以上が狂犬病で死亡
そもそも狂犬病は、犬特有の病気ではない。れっきとした人畜共通感染症で、犬以外の動物、もちろん人間にもうつる。平成18年にフィリピンで犬に咬まれて狂犬病に感染し、日本帰国後に発病・死亡した男性2名のケース(輸入感染)は、専門家にとっては記憶に新しいところだ。
また、狂犬病が国内で発生していないのは、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンなど、世界のわずか10数カ国のみ。多くの国では、狂犬病が今も健在だ。
実に、世界全体で年間5万人以上が狂犬病で命を落としているとされる。
主な感染源となる犬の予防対策を怠ったら、いつ何時、日本でも狂犬病が復活するかわからないのだ。