「長寿の秘密はわからない。できるだけの勤労と、失われたものを再度築くこと」
PTGの研究は、近年、心理学の分野で世界的に広がっているが、ここでの「Growth=成長」は、単に「自己成長しよう」という精神論的なものではない。社会的背景などが絡み合い、内的・外的な要因が相互影響した結果としての現象である。人は環境の生き物だ。ホロコーストが人々にPTGをもたらすに値する、社会的な認知や補償があったことは非常に大きい。
また、ポジティブな変化は、あくまで可能性のひとつであり、トラウマは筆舌にしがたい辛く重い体験である。それは他者が客観的に評価できるものではなく、その人の心の内で、ずるずるとどこまでもついて回る、途方もない存在だ。
イスラエルさんの内面で、ホロコーストを経てどんな変化が起きたのかは定かでないが、インタビューの質問に対し、「長寿の秘密はわからない」「やるべきことは、できるだけの勤労と、失われたものを再度築くことだった」と答えている。
今回の発表は、人は脆さも抱えているが、限りない力強さも備えているという、希望的で、それこそポジティブなニュースといえるだろう。
(文=編集部)