やがて育児に加えて介護も……cba/PIXTA(ピクスタ)
日本で、今までにない新たな社会的リスクが浮上している。子育てと介護を同時に行わなければならない「ダブルケア」世帯の増加だ。
これまで「仕事と子育て」「仕事と介護」の両立は大きな課題だった。さらに近年、晩婚化・出産年齢の高齢化が加わり、「子育てと介護」の二重負担がクローズアップされている。
警鐘を鳴らすのは、英ブリストル大学・山下順子講師、横浜国立大学・相馬直子准教授らの家族問題に関する研究者たち。「ダブルケア」は、この問題に対する理解が広まるように両氏が編み出した造語だ。
相馬准教授によると、昭和50年では、女性が最初の子どもを産む平均年齢は25.7歳。当時は子育てが一段落するころに、親の介護が必要な時期にさしかかるサイクルになっていたのだ。
ところが、平成に入ると急速に晩婚化が進行。平成24年には第一子の出産年齢が平均30.3歳と、約5歳も高齢に。このため、ダブルケアが起こりやすくなっているのだ。
30代の3割が「ダブルケア」
現代は、出産してからも働き続ける女性が増えている。その一方で、「子育てや介護は女性の仕事」という意識は、未だに男女とも根強い。とりわけ共働き家庭の母親がダブルケアを抱えた場合、ちょっとしたつまづきで、その負担が増大する。たとえば、こんなケースが考えられる。
フルタイムの勤務で、就学前の幼い子どもふたりを育てながら、近所に住むパーキンソン病の母親を介護するAさん。
仕事を終えて子どもを保育園に迎えに行き、母親宅に寄って食事作り。自宅に帰って子どもを寝かしつけ、夫の帰宅後に再び母親の様子を見に行く。
24時間、気の休まることがない。万一子どもの病気が重なれば、完全に首が回らなくなってしまう。
このようなケースは他人事でもない。相馬准教授らは昨年8月、ダブルケアに関するインターネット調査を実施した。
ソニー生命保険と協力して、大学生以下の子どもを持つ母親1000人にアンケートを行ったところ、「現在ダブルケアに直面中」が3.3%、「過去にダブルケアを経験」が4.0%だった。
「現在直面中で過去にも経験がある」が0.9%。何らかの形でダブルケアを経験している人は全体の8.2%となった。
さらに「数年先にダブルケアに直面する」と回答した人は14.4%。ダブルケアを経験者と合わせると、5人に1人(22.6%)が身近な問題であることが分かった。
特に現在30代の母親は、27.1%がダブルケアを経験しているか、数年先に直面することが判明した。