実際に患者さんの口臭を判定する口臭の官能検査 ※試験者は患者ではなくモデル
「口臭は人間だけに起こります」――。
そのように話すのは「ほんだ歯科」の本田俊一院長だ。
「日本口臭学会では、口臭を『本人あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称である』と学術的に定義しています。つまり、会話の時に吐き出されてくる『吐く息=呼気』に悪臭があるということです。動物は会話をしません。会話をするのは人間だけですから、口臭は人間だけに起こるといえるのです」
人間だけが呼吸をしながら声帯をふるわせて会話をする。従って、会話時は鼻呼吸ができず、口で呼吸をする。そのため、口や鼻の臭いを撒き散らしながら話すことになり、口臭がするのだ。
「口の中には様々な菌が棲みついていますが、その中の嫌気性菌が、タンパク質やアミノ酸を分解しアミン、アンモニア、インドールなどの悪臭を発生させます。とはいえ、健康な歯や舌は臭いません。それでは何が臭うかといえば、唾液です」
たっぷりの唾液がサラサラと流れていれば口臭はしない
正確に言えば、唾液が少なくなり、口の中を流れなくなると、臭いが強くなるという。
「江戸の学者・貝原益軒は、心身の健康と長寿を保つ養生法を記した『養生訓』の中で、唾液は捨ててはいけないと説いています。しかし、寝起きだけはいいとも書いています。これは、どういうことかというと、サラサラの唾液が口の中を流れていれば、善玉菌を保護し、悪臭を発する悪玉菌を抑えることができるということです。口臭をふせぐためには、唾液がポイントになります」
それでは、寝起きの唾液を捨ててもよいというのは、どういうことだろう?
「睡眠中は唾液の分泌が少なくなり、また口腔内の乾燥も起こるため、菌が増殖を繰り返します。そのため、寝起き時は、1日の中で最も菌が増えている。つまり起床時には、誰でもひどい口臭があるのが当然なのです。そこで益軒は、起きてすぐに唾液を吐き捨て、うがい、歯磨きをすることがとても大切だと説いたのです」
食後はむしろ口の中の細菌数が減少する
つまり、歯磨きは朝食後でなく、起きたらすぐにしたほうがいいのである。
「むしろ食事中には、唾液がたくさん分泌され、流れるため、食後には自然状態で最も唾液中の細菌数が減少します」
このように、唾液が口臭を予防し、口腔の健康を保つのに重要な役割を果たしていることは、あまり知られていないだろう。
「みなさん、口の中では、歯が一番大事だ思っていますが、実は唾液。次が舌。そして歯は3番目です」
舌は、唾液を流して、口中を清潔に保つ重要な役割をになっている。詳しくは、第3回「口臭はセルフコントロールできる」でお伝えする。