>  >  > 東日本大震災でも身元特定の手がかりになった「法歯学」
シリーズ「最新の科学捜査で真犯人を追え!」第12回

歯型で個人を特定! 東日本大震災でも使われた「法歯学」の鑑定力

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歯科医院はカルテを5年間、X線写真を3年間保存

 このように、歯型、顎、頭蓋骨などがもつ様々な個人情報を科学的に解明し、遺体の身元確認に貢献しているのが、歯の法医学である法歯学という法科学鑑定の専門領域だ。法歯学は、凶悪犯罪、大事故、大規模災害の悲劇が起きるたびに、長足の発展を遂げてきた皮肉な歴史がある。

 たとえば、1985(昭和60)年8月12日、群馬県多野郡上野村の御巣鷹の尾根に墜落し、乗員乗客524名のうち520名が死亡した日航ジャンボ機墜落事件だ。世界の航空事故史上最多の犠牲者を生んだ事件を契機に、警察庁と全国の歯科医院が連携する警察歯科医会が急遽、設立された。

 日航ジャンボ機墜落事件では、死者520名のうち、最終的に身元確認できたのは518人。歯科医師らの協力で歯型によって身元確認できたのは200人以上と記録されている。

 警察歯科医会の連携ネットワークは、阪神淡路大震災、東日本大震災の非常事態時にも、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件などの凶悪犯罪の捜査にも生かされ、夥しい犠牲者や被害者の身元確認に役立てられてきた。

 現在、全国の歯科医院や大学病院は、すべてのカルテを5年間、X線写真を3年間、それぞれ保存することを義務づけられ、警察庁との協力体制の緊密化が図られている。

 他殺死、事故死、災害死……。1本の歯から遺体の身元が割れる! 歯型は身元特定の決定的な手がかりになる。まさに、「歯は口ほどにモノをいう」のだ。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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