指紋や血痕も浮かび上がる(shutterstock.com)
人間の視覚も視力も、おのずから限界がある。
だが、科学捜査に携わる鑑識課や科捜研は、スーパーテクノロジーを駆使して光学検査を進めている。最先端のオプティカル技術を集約したハイテク機器が、科学捜査用ライトのALS(Alternative Light Sources/励起光源)だ。
ALSは、可視光線、赤外線、紫外線が出す光(電磁波)の周波数(355~900nm)を照射して、肉眼で見えない痕跡や証拠を可視化する光学検査システム。見かけは懐中電灯だが、光源にLED(発光ダイオード)を搭載したスグレものだ。
肉眼で見えない痕跡や証拠を“見える化”する光学検査システム
どのような仕組みなのか?
地球上に存在する有機物(生物が作る炭素原子を含む物質)は、電磁波、熱、摩擦などからエネルギーを受け取ると一定の周波数の光を吸収し、原子や分子をより高いエネルギー状態に移して発光するルミネッセンスという性質がある。たとえば、紅いリンゴ、黄色いバナナのように、物質の色が違って見えるのも、この現象だ。
ルミネッセンスとは、物質がエネルギーによって励起され、受け取った特定の周波数の光を放出する現象。励起とは、原子や分子が外部からエネルギーを与えられると、エネルギーの低い状態からエネルギーの高い状態へと移る現象だ。
つまり、特定の周波数の光を照射し、カラーゴーグルを使って不要な周波数の光をカットすると、肉眼で見えなかった指紋、血痕、体液、毛髪、繊維、打撲痕などの痕跡が鮮明に浮かび上がる、それがALSの光学検査なのだ。