GC(ガスクロマトグラフィー)で火災現象を再現・検証(shutterstock.com)
消防庁の「平成26年の火災状況」によれば、出火件数43,741件、死者数1,678人。出火原因は、放火4,884件(11.2%)、たばこ4,088件(9.3%)、こんろ3,484件(8.0%)、放火の疑い3,154件(7.2%)、たき火2,913件(6.7%)。放火と放火の疑いを合わせると8,038件(18.4%)に上る。
放火か? 失火か? 自然発火か? 火災の原因を探り、放火犯を特定し、責任の所在を明らかにするのが火災鑑定だ。火災は、発生プロセスが千差万別のため、現場で物的証拠が焼失したり、人命救助や消火活動によって破壊されたりすることから、原因の特定が難航する。
しかも、最近の火災は、電気・ガス・灯油・アルコールなど、原因が多様化し、建築物の構造・材料や機器類などの技術革新によって火災形態が複雑化している。このような状況に対処するために、建築学、都市計画学、物理学、化学、電気工学、機械工学、構造力学などの広領域なノウハウと経験を結集しながら、火災現象を科学的に究明するのが、火災鑑定だ。
火災鑑定は、火災による発熱や煙流動などの火災現象を物理学的に分析する「火災物理解析」と、現場から集めた出火の原因物質を科学分析機器で総合的に調べる「成分分析・性状解析」がある。
「火災物理解析」は、火災流体力学の英知を活かし、発生源、出火部、出火原因、火勢の成長経路、火炎方向、燃焼速度などを精査し、現場に残された燃え残り(燃焼残滓)、残存物、延焼残物などからコンピューター・シュミレーションによる数値・画像解析を行い、火災現象を再現・検証する手法だ。
数百万分の1g単位の微粒子を高精度に検出するGCの驚くべき解析力
「成分分析・性状解析」は、燃え残りから、原因、延焼拡大の要因などを明らかにする手法だ。放火事件では、火をつけたのはライターかマッチなのか、ガソリンや灯油などの可燃物(燃焼促進剤)なのかを、燃え残りを分析して調べる。それが、1970年代に開発されたGC(ガスクロマトグラフィー)だ。
GC(ガスクロ)は、燃え残りに吸収された揮発性成分を気化・分離させ、成分の含有量を質量分析計を使って測定する分析装置。わずかな燃え残りからでも、数百万分の1g単位の微粒子を高精度に検出できるので、可燃物の種類、たとえば、ガソリンなら添加物の種類、石油会社や銘柄も判明する。