女性たちの切なる希望をかなえる卵子凍結出産は、どうあるべきなのか?
毎日新聞が昨年4月に実施した全国調査によれば、女性が卵子凍結を希望する理由は「パートナーが見つからないため」「仕事を優先するため」が多い。また、仕事など社会的な理由で卵子凍結した女性は全国で353人。ただ、卵子凍結を受け付けている医療機関は、全国に12施設ある。したがって、今回の女性以外の出産例もあるかもしれない。
だが、受精卵に比べて未受精卵は壊れやすいため、卵子凍結による妊娠・出産率は、36歳で16.8%、40歳で8.1%、42歳で5.0%、45歳で1.0%と、加齢に伴って低下する。高齢出産は、流産や合併症のリスクも高まるため、卵子凍結が出産率の上昇や少子高齢化の歯止めになるか否かは不明だ。
昨年2月、順天堂大学浦安病院と浦安市は、加齢による不妊を防ぐために、20〜35歳の健康な女性が自分の卵子を凍結保存する「プリンセス・バンク」構想を発表、市民を対象に凍結保存費用の助成を推進している。
慶応大学の吉村泰典名誉教授(元日本生殖医学会理事長)は「凍結すれば子どもが産まれるというものではない。仕事と育児を両立しやすい社会環境を整備することが先決だ」と指摘している。
どうしても子どもが産みたい! そんな女性たちの切なる希望をかなえる卵子凍結出産は、どうあるべきなのか?
問われているのは、母子の生命と人権を守り切れない社会システムの矛盾かもしれない。
(文=編集部)