減量手術は受けるべきか否か?shutterstock.com
中年期から高齢の肥満患者は、減量手術を行うと生存率が高まることが、新たな研究で示された。一方で、35歳未満は減量手術による延命効果はみられず、特に女性で事故死や自殺などの「外因死」が増加していることもわかった。この知見は、「JAMA Surgery」オンライン版に2月10日掲載された。
この研究に対して、参加していない二人の研究者がコメントしている。米シンシナティ大学医学部内科准教授のDaniel Schauer 氏は、「若年、特に女性の肥満に対しては、減量手術後の事故死や自殺などのリスクについて事前にカウンセリングを行うべきだ」と述べている。
また、減量手術の専門家である米ハーバード大学医学大学院(ボストン)助教授のMalcolm Kenneth Robinson氏は、高齢者では延命によるベネフィットよりも減量手術に伴うリスクが上回る可能性があることに懸念を示している。
減量手術を受けた重度の肥満患者約8,000人を7年間追跡
今回の研究を主導した米ブリガムヤング大学(ユタ州)運動科学部助教授のLanceDavidson氏らは、1984~2002年に、同州でルーワイ胃バイパス術を受けた重度の肥満患者約8,000人を7年間追跡し、減量手術を受けなかった肥満者と生存率を比較した。
ルーワイ胃バイパス術とは、胃の上部に小さな胃嚢(ポーチ)を作り、小腸とポーチを繋ぐもの。新しく作られた小さな胃袋は少量の食事で満足することができ、短くなった小腸からは過剰な栄養素が吸収されないようになるため減量へとつながるもの。
この調査の結果、減量手術を行わなかった肥満者に比べて、減量手術を行った肥満者では、全死亡率が35~44歳群で46%、45~54歳群で57%、55~74歳群では50%低下していた。
一方で、35歳未満の人では、減量手術を行ったほうが全死亡率は高かった。また、こうした若年者群では事故死や自殺などの外因死の発生率も高く、特に、男性に比べて女性でそのリスクが高まっていた。
女性の自殺リスクについて、Robinson氏は、若年女性の重度肥満患者は不安や抑うつの重症度が高く、「減量手術で問題がすべて解決する」との過度な期待を抱く人も多いが、術後に問題が解決しない現状に直面し、うつ状態がより悪化する可能性があることを指摘している。
しかし、Schauer氏は、全死亡率を長期的に半減できる医学的介入は数少なく、今回の研究は、総合的にはポジティブなものだと述べている。また、Robinson氏は、今回の結果から、高齢者でも減量手術による延命効果が期待できるが、高齢になってから減量手術を行うほうがよいという意味ではない点を強調している。