では、排便量や硬さのバランスが崩れる、1日4回以上の頻便は、なぜ起きるのか?
さまざまな原因があるが、頻便になると特に便失禁を起こしやすくなる。通勤中、会議や授業中、買い物中などに急に便意を催して我慢できずに漏らす、気がつくと漏れている、それが便失禁だ。国際失禁会議によれば、自らの意思に反して、社会的、衛生的に問題となる状況で便が漏れる症状と定義する。
便失禁は、2つのタイプがある。
漏出性便失禁は、便意を催さないため、気付かないうちに漏れる排便障害だ。肛門を締めている内肛門括約筋が、何らかの障害で緩むので、直腸に残像している少量の粘液や便汁が漏れる。
切迫性便失禁は、便意を催すが、外肛門括約筋の障害によって肛門を締め切れないために、トイレまで我慢できずに漏れる排便障害だ。ただ、外肛門括約筋は正常でも、直腸がんの切除手術で直腸の容量が小さくなって便を溜めきれなくなるケースもある。また、ストレスによって腹痛、下痢、便秘などを起こす過敏性腸症候群(IBS)のために、腸の収縮力が肛門の締める力よりも強まって発症する場合もある。
便失禁の症状のある人は、20~65歳で4%(約310万人)、65歳以上で7.5%(約135万人)とされ、女性や高齢者に多い。女性は、分娩時の会陰裂傷や会陰切開によって外肛門括約筋を損傷するからだ。特に高齢者の女性は、内肛門括約筋が薄くなり、収縮力が弱まるために発症しやすい。
その他、痔ろう、裂肛、内痔核の手術による括約筋損傷、直腸がんの手術後に硬く大きな便の塊が直腸に溜まる直腸性便秘、脊髄損傷などによる直腸の知覚障害や排便関連筋群の機能喪失、学童期の男児に多い遺糞症(いふんしょう)などが誘因となって、便失禁を生じることも少なくない。
このように、頻便が引き金になって便失禁が起きるリスクは高まる。だが、ほとんどの頻便は、腸の働きが低下して起きる。腸内環境が悪くなると、状況や環境の変化にストレス過剰になるため、腸の動きが活発化し、便が肛門まで押し出されやすくなるからだ。
つまり、お腹がゆるむのは、腸内の悪玉菌が多くなり、腸内環境が悪化しているためだ。善玉菌を増やし、腸内環境を整えれば、免疫力が高まり、便通異常や体調不良が和らぎ、頻便が抑えられる。日頃から、腸内環境を整えておくことが何よりも大切だ。
頻便、腹部膨満、腹痛、下痢、便秘など、お腹の調子に少しでも異変を感じたら、病院や診療所で早めに診断を受けてほしい。
(文=編集部)