同調査の「衣服・履物の転倒」結果は、年代別で意外にも60代が最多(衣服・履物共に約5割)。まだ血気盛んなシニア初心者層のヒヤリ率が先輩陣を抑えて高いのは、やはり老人力不足(=体力低下と脳内イメージが乖離している)ゆえだろうか。
衣服による転倒では「ズボンを着替える際にバランスを崩した」とか「パジャマ姿でトイレに立った時、裾を踏んで」などの事例が多い。一方、踵のないサンダルやスリッパでの転倒例は「雨上がりの鉄骨階段で滑り落ちた」とか「台所で横に移動する際、スリッパを引っかけて転んだ」など、履物自体に罪はないが反射能力次第で凶器と化す例も。
澤野文香・山田民子両氏が60歳以上の女性30人を調査して纏めた論文『高齢者衣服の研究と提案』(東京家政大学博物館紀要・第20集;2015)によれば、既製品への満足度を問うと「3〜4割の高齢者が不満を感じており、60代がバスト、70代が袖に対しての不満が多かった」とか。サイズについては60・70代共に袖丈への不満を回答している。
また、既製品の安全性に関しては60代の約4割が不満を表明し、理由としては「階段で裾を踏んだことがある」「服を引っかけたことがある」「夜道で車・自転車にぶつかりそうになったことがある」などが多かったそうだ。
逆に70代が安全性への不満を感じていない理由を「60代の方が70代よりも活発に活動することが多い分、安全性に対する不満が多いのではないかと考えられた」と、御両人は分析している。
行動力も好奇心も旺盛なぶん、服絡みの事故にも見舞われやすいのかもしれない60代。この年代の親を持つ方は今年のクリスマス・プレゼントに「安全な服」を選んでみるのも一考だろう。くれぐれも「老人扱い」は禁物であるが……。
(文=編集部)