なぜ、ヒトは餅を喉に詰まらせる? 高齢者だけに限らない1月に集中する窒息死

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“危険な食べ物”とさえいえる? gontabunta/PIXTA(ピクスタ)

 まもなく新年。正月迎えると必ずニュースで報じられるのが“餅を喉に詰まらせ、死亡”。ブラックジョークで“風物死”と揶揄されるほど、1月に集中する。国内での食べ物による窒息の死亡者数は毎年4000名を超えるとされる。なかでも餅は、圧倒的な事故率で“危険な食べ物”とさえいえる。

 特に高齢者は、噛む力も飲み込む力も落ちている人が多い。普段何気なく行っている、 「嚥下(えんげ)」と呼ばれる“飲み込む”という行為は、実は複雑なメカニズムとなっている。

“飲み込める”のは脳の情報伝達が正常なおかげ

食物は口内で噛み砕かれ、唾液と混ぜられて食塊(しょくかい)となる。この塊を喉に通過させるのだが、一連の動きに要する時間は約1秒。

①口が閉じられ、奥歯が一瞬噛みあわされて顎を固定する。
②口内の軟口蓋(上顎の奥の軟らかい部分)が反りあがって、鼻に通じる穴を塞ぐ。(口の中が完全に密閉状態になる)
③舌先が上顎に向けて押し上がると同時に、舌の根元は下がる。(口内の圧を高めつつ、食塊を通しやすくする)
④咽喉の奥、喉頭蓋(こうとうがい)が下がり、気管の入り口を塞ぐ。
⑤反射運動で食道の入り口が開き、食塊が運ばれていく。

 そして、嚥下の直前は呼吸を止め、直後には必ず息を吐く。これは④で気管の入り口が塞がるためだ。飲み物や唾液などでむせたりするときは、間違って気管に入る「誤嚥(ごえん)」が起こっている。ウイルスや細菌が肺に入ってしまうと誤嚥性肺炎となり、最悪は死亡に至ることもある。

 さらに、飲み込む動作にはさまざまな筋肉が作用する。その指令は、脳の大脳基底核が担う。喉に食塊が到達すると反射的に嚥下動作ができるのは、正常に脳からの情報が伝わるおかげ。これだけ複雑なメカニズムを要するのだ。

加齢が原因とかぎらない脳梗塞や脳出血のサイン

 窒息事故では、高齢者が注目されがちだが、年齢を問わず嚥下障害は起こりうる。

 筋肉の衰えや麻痺、歯や口腔内の環境悪化、ストレスやうつで飲み込みにくさを覚えることもある。また、嚥下反射を指示する大脳基底核に異常があると飲み込みの動作に遅れが生じる。これが脳梗塞や脳出血のサインになることもある。

 嚥下障害があるとき、気をつけるべき点はなんだろうか。そもそも嚥下障害のある人に向かない「飲み込みづらい」食べ物がある。

①パサパサしたもの(パン、ゆで卵、カステラなど)
口内の水分を奪い、歯や口の中にへばりついたり、喉に詰まったりする。
②ベタベタしたもの(餅、団子など)
粘りのあるものは張りつきやすく、小さく切っても噛むうちに塊となり窒息の危険がある。
③硬いもの(タコ、ごぼう、れんこんなど)
弾力のあるものや繊維の多いものなどは噛み砕くことが難しく、また食塊をつくりにくい。
④サラサラの液体(水、お茶、ジュースなど)
粘度のない液体は早く喉に落ちるため、嚥下が間に合わずにむせる原因になることも。

 食べ方に注意すべき点もある。

①食べ物は一口大に切る
②テレビを観たり、話したり、「ながら食べ」をしない
③少量ずつ口に入れ、飲み込んでから、次のものを口に入れる
③食事中に驚かせない

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