網膜剥離のため引退を決めた亀田大毅選手(写真は公式ブログより)
ボクシングの元世界チャンピオンの亀田大毅さんが網膜剥離で視力が低下したため引退するとの報道がありました。ボクシングをはじめとする格闘技で、網膜剥離のために引退した選手は少なくありません。
今回は、網膜剥離とはどのような疾患か概説致します。
どの年齢でも起こりうる病気
人間の目はよくカメラにたとえられますが、カメラのフィルムにあたるのが網膜です(図1)。目の中に入った光(映像)が網膜に当たると、それを電気信号に変えて視神経から脳へ送られます。
【図1】目の断面図
網膜剥離は、網膜(10層構造)が9層目の「視細胞」と10層目の「色素上皮細胞」の間で剥れてしまう病気です。網膜剥離になると、剥がれた部分の映像が見えなくなります(図2)。視細胞には再生能力があるので、早期に治療すれば治癒する病気です。
しかし、黄斑部(おうはんぶ)と呼ばれる物を見る中心部分が剥れると、著しく視力が低下し、治療しても正常な視機能の回復は困難になり失明にいたることもあります。
【図2】視野欠損のイメージ
網膜剥離には、網膜にあいた穴が原因となる「裂孔原性(れっこうげんせい)」と糖尿病網膜症などが原因となる「非裂孔原性」があります。一般的に言われる網膜剥離は裂孔原性のことをさし、若年者(10〜20代)と中高年者(50〜60代)に多く見られますが、どの年齢でも起こりうる病気です。
飛蚊症と光視症
目の中は硝子体(しょうしたい)というゲル状の物質で満たされており、硝子体と網膜は癒着しています。それが年齢とともに硝子体のゲルが変化して網膜との癒着が剥がれていきます。このとき癒着が強い部分があると、網膜を牽引して網膜に裂孔を作ってしまいます。網膜剥離はその裂孔を通って、硝子体側から視細胞層と網膜色素上皮層の間に硝子体の液化した水が入り込み、網膜剥離を起こします。
このような目の中の変化は、後部硝子体剥離といって中高年の方の網膜剥離で主に見られる現象です。一方で、強度近視で網膜に薄い箇所がある方や外傷を受けた方は、年齢に関係なく若い方でも網膜剥離になることがあります。
初期の症状として多いのが、飛蚊症や光視症です。明るいところや白い壁などを見たときに目の前に虫や糸くずのようなものが飛んで見えるのが飛蚊症です。
ほとんどの場合は、生理的なもので硝子体の変化による混濁が影となって網膜に映っているもので心配はないのですが、飛蚊症の数が増えたり大きくなったら、裂孔や網膜剥離になりかけている可能性があります。網膜剥離を起こしている場合は、視力が低下したり、視野が暗くなったり、視野欠損が起こります。また、硝子体と網膜の癒着が剥がれる時に光が走ったように見えるのが光視症です。