シリーズ「子どもには絶対に使ってはいけない生活用品」8回

TPP締結は愚行! このままでは日本の「食の安全を守る砦」がズタズタに

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 個別の食品を見ると、乳製品、牛肉、果実の輸入増によって、日本人の健康リスクも増大する可能性があります。

 現在、バターには360%、脱脂粉乳には218%の関税が課せられています。この関税率は維持されますが、バターと脱脂粉乳を合わせた生乳換算で、6年目まで年間6万トン、7年目からは年間7万トンという輸入枠が設けられました。これら乳製品の主な輸入先はニュージーランドになりますが、2年前、ニュージーランド製乳製品からボツリヌス菌が検出され、世界中を震撼させました。ボツリヌス菌は、青酸カリよりはるかに致死性の高い非常に危険な菌です。

 牛肉は、関税率が10%引き下がります。そしてTPPによって牛肉の輸入量が増えれば、日本の外食店には「やわらか加工」「霜降り加工」「カットステーキ」と表記されたメニューが並ぶことになるでしょう。これらのほとんどは、米国産の「インジェクションビーフ(牛脂注入肉)」と呼ばれるものです。インジェクションビーフには、牛脂、還元水飴、ショートニング、ポリリン酸ナトリウム、酸化防止剤、増粘多糖類、化学調味料などがを含む「ピックル液」が注入されています。こんな肉が健康に良いわけがありません。

 また、米国産牛は、抗生物質や成長ホルモン剤を多用して飼育されているので、それらの人体への悪影響も懸念されます。さらに、BSE(牛海綿状脳症・狂牛病)と疑われる歩行困難な「へたり牛」が、米国ではたびたび発生し、その肉が流通しています。日本では話題になりませんが、BSEは終焉したわけではないことを、肝に命じておく必要があります。

 果実類の関税は段階的に引き下げられ、6~11年後には撤廃されます。そこで心配なのは「ポストハーベスト農薬」です。米国では収穫後に農薬を防腐剤代わりに、直接、噴霧したりしています。果実に直接、農薬水溶液に漬けたり、噴霧するのですから残留濃度も高くなります(日本では禁止)。ポストハーベストに使われている農薬は、発がん性が指摘されているものがほとんどです。

 TPP締結で輸入食品が激増するのは目に見えています。日本の「食の安全・安心」のためには、輸入の際の検疫強化が問われるのです。しかし日本政府は、貿易障害につながるからと、検疫強化など考えてもいないようです。日本の「食の安全・安心」は、重大な危機を迎えているのは間違いありません。


郡司和夫(ぐんじ・かずお)
フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。

郡司和夫(ぐんじ・かずお)

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