封切り直前『パパ、遺伝子組み換えってなあに?』ラット試験でもがんが多発、遺伝子組み換え食品(GMO)は本当に怖い!?

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『パパ、遺伝子組み換えってなあに?』 2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/アメリカ、ハイチ、ノルウェー 監督:ジェレミー・セイファート 出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリーニ、ヴァンダナ・シヴァ配給・宣伝:アップリンク 2015.4.25(土)より、渋谷アップリンク、名演小劇場ほか、全国順次公開

 ジェレミー・セイファート監督が本作を作るきっかけとなったのは、2010年のハイチ大地震後のある出来事だった。甚大な被害を受け人々が食料不足にあえいでいる中、ハイチの農民たちが、米・モンサント社から寄付されたGMO(Genetic Modified Organism:遺伝子組み換え作物)の種を燃やすという事件が起きたのだ。

 セイファート監督はこのニュースから、GMOが大きな問題を孕んでいることを知る。3人の子の父親として食に関心を持つ彼は、「どんなものかも知らずに食べているGMOのことを知りたい」と考え、家族とともに遺伝子組み換えの真実を追う旅に出る。

 また彼は家族と離れ、ハイチの農村、ノルウェーの"種子銀行"の冷凍貯蔵庫、ラットの長期GMO給餌実験を行ったフランスの大学など世界各地を回り、食産業を巡る衝撃的な現状を明らかにしていく。

 ハイチ農民がGM種子を燃やした最大の理由は、この種子で育った植物の種を翌年に撒くことが禁じられているからだ。モンサント社が種の特許権を持っているため、農民は毎年種子と、セットとなる肥料や農薬を購入しなくてはならない。「GM種子はハイチの固定種や食の権利と文化を奪った。種は人類の財産でその種を誰かが所有すべきではない」と監督は主張する。

 GMOの長期安全性を示すデータがないため、監督はGM種子を扱ういくつかの企業に電話取材を申し込むが、たらい回しにされる。また、足を運んだモンサント社では門前払いされる始末だ。何か不都合でもあるのだろうか。

 さらに、GMO拡大の背景にある政府と企業の癒着の可能性にも踏み込む。GM企業と政府の要職を行ったり来たりする"回転ドア人事"により、GM食品の規制撤廃や緩和推進が行われていることをアニメーションでわかりやすく説明する。こうした愚行がまかり通っているのは、やはり利益追求のためだという。

TPP加盟でGM食品が日本になだれこむ?

 アメリカではGMO使用に関して一部の州を除き表示義務はなく、街の人もGMOの意味を知る人は多くない。一方、EUでは厳しい表示義務があるものの、GM飼料を摂取した家畜の肉にはない。また、日本においては義務化されているが、生成抽出食品、発酵分解食品、畜産物の飼料などには不適用であり、不十分なものだ。今後TPPに加盟すれば表示義務が緩和され、GM食品が日本国内になだれこむ可能性もあるといわれており、食の安全崩壊が他人事ではなくなってきた。

 作品内には、監督のGMOへの過敏すぎる反応に首をかしげたくなるシーンがいくつかある。「神経質になりすぎると日常生活が困難になり、被害妄想も大きくなるのでは」と心配になるほどだ。だが、カメラはそれらが妄想ではないことを裏付けるような事実を突きつける。

 モンサント社は3カ月の実験結果しか公表していない。だが、フランス・カーン大学のセラリーニ教授はラットに対する長期GMO給餌試験を行い、その健康被害に関して驚くべき報告をした。ラットの寿命である2年間、GMトウモロコシを与え続けたグループでは、1年目の終わりごろ(人間なら30歳~40歳ぐらい)から腫瘍が確認されはじめ、24ヵ月目にはメスの50~80%に腫瘍が見つかったのだ。「全腫瘍の原因がGMOとは言いきれないが、そのひとつだと思う」と教授は言う。

 ここで描かれている現在の食産業の状況を考えると、自分たちの健康は自分たちで守っていくしかないように思える。そのためにも徹底した表示義務化を実現させ、"それを選ばない権利"を手にすることは不可欠なのだ。

 小さなころから"種"に興味を持つ、監督の6歳の長男フィンの言葉に思わず納得する。「みんながGM種子を買うのをやめたら、会社は困ってGMOもなくなるのにね」

 ちなみに日本モンサント株式会社はすでに1957年に設立されている。とっくに他人事ではない。

『パパ、遺伝子組み換えってなあに?』
2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/アメリカ、ハイチ、ノルウェー
監督:ジェレミー・セイファート
出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリーニ、ヴァンダナ・シヴァ配給・宣伝:アップリンク
2015.4.25(土)より、渋谷アップリンク、名演小劇場ほか、全国順次公開
(文=編集部)

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