多嚢胞性卵巣症候群でも適切な治療で出産もwavebreakmedia/PIXTA(ピクスタ)
先日、女優の大和田美帆さんが第一子を出産した。大和田さんといえば、父は俳優の大和田獏さん、母は女優の岡江久美子さんという芸能一家。
そんな大和田さんは、妊娠が判明する1年ほど前に、医師から「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」(PCOS)との診断を受けていたという。この病態は、月経不順や不妊症の原因になるといわれているため、大和田さんが未完治の状態で妊娠したことは「奇跡的」と担当医は述べているという。
あまり聞きなれない「多嚢胞性卵巣症候群」だが、国内でこれに悩んでいる女性はどれだけいるのだろうか? また基本的な症状、治療法などを見てみよう。
卵胞が作られにくくなる
多嚢胞性卵巣症候群は、国内の生殖年齢女性の6~10%に起きている。不妊の原因となる病気のなかでも主要な病気だ。
多嚢胞性卵巣症候群と診断されるのは、「月経異常」「多嚢胞性卵巣」「血中男性ホルモン高値、または LH基礎値高値かつFSH基礎値正常」の3項目をすべて満たした場合のみ。この基準は、日本産科婦人科学会によって設けられたもので、全国の生殖内分泌の主要診療施設に対して行ったアンケート調査に基づいている。
主な症状と検査結果を集めた結果、全体の8割以上の頻度で出現する項目を抽出した。1993年に初めて基準が設けられて以来、改訂が重ねられ、2007年には現在の3つの基準に落ち着いた。
3項目のひとつ、「多嚢胞性卵巣」の基準は、超音波断層検査で両側の卵巣に多数の「小卵胞」がみられ、少なくとも一方の卵巣で小卵胞(2~9mm)が10個以上存在することだ。卵胞の発育が遅く、排卵されにくい状態にある。
また、日本では、肥満や多毛などが起きる「血中男性ホルモン高値」については約2割程度で、ほとんどの場合、「LH基礎値高値かつFSH基礎値正常」と診断されることが多いという。
LHとは黄体化ホルモンのことで、卵胞刺激ホルモンFSHと共に働き、卵巣を刺激して卵胞を発育・成熟させたり、排卵させたりする。どちらも脳の下垂体から分泌されるホルモンで、排卵に重要な役割を果たす。
多嚢胞性卵巣症候群そのものの原因は、はっきり分かっていない。だが、これらの複数の要因が重なり、卵胞が作られにくくなる病態といえる。卵胞が正常に作られないことで月経異常をきたし、当然、妊娠しづらくなる。