ちなみに、英バーミンガム大学の研究でも、「ながら」食事は太りやすい傾向にあるという報告がなされている。この研究では、"賞金をかけた"ゲームをしながら昼食したグループが、「食事だけ」「普通のゲーム」グループに比べて、その後、ビスケットに手を伸ばす率が高かいという結果となった。
食事に集中せずにいると、「食べる」という行為を脳内にしっかり記憶させにくくなる。すると、後で空腹を感じやすくなり、スナック菓子などに手を伸ばしてしまう......というわけだ。何を食べているかをはっきりと脳が記憶されることは、食欲をコントロールする上で重要だ。
簡単で有効な方法は「よく噛む」こと
脳の視床下部にある「満腹中枢」は、食事で満腹を感じる器官だ。食事して血糖値が上がるのを感知して、体に必要なエネルギー量かを判断する。「これ以上は不要」と判断した場合は、食欲が止まって満腹を実感する。
満腹中枢が血糖値上昇を感知するまで約20分かかる。食べ物を摂取しても、すぐに血糖値が上昇して、満腹中枢がそれを感知するわけではない。急いで食べて「食べ過ぎた」と後悔したことはないだろうか。「お腹が一杯になった」という感覚を得る前に、食べ終わるからだ。
食事時に集中し、満腹中枢が感知する適切な量を食べるにはどうすればよいか? もっとも簡単で有効な方法は「よく噛む」こと。咀嚼回数を多くしてゆっくり食事をすることが、過食による肥満を防止することにつながる。
肉・卵・チーズを積極的に食べる「MEC食」を推奨する、こくらクリニック(沖縄県)院長の渡辺信幸医師は、「ひと口30回、きちんと噛むこと」を合わせて指導している。
「よく噛むことでだ液が大量に分泌され、満腹中枢が刺激されて、脳が満腹だと認識する。空腹のまま、あまり噛まずに食事をすると、つい早食いになり、胃がパンパンになるまで食べてしまう。ひと口30回噛みながら、ゆっくり食べると、腹八分目以下の食事で満腹になる」と勧めている。
満腹感のカギを握っている「咀嚼」。渡辺医師によると、充分に噛んで食べることで、顎のラインもシャープになる効果もあるという。近年では、周囲を見渡すとスマホの「ながら食事」の姿が目につく。食事は健康を左右する重要な"イベント"。食事を楽しむ余裕のなさは、現代人の肥満や体の不調を招く原因のひとつかもしれない。
(文=編集部)