インタビュー「患者サイドも医療サイドも満足の“日帰り手術”を!」第2回 東京ヘルニアセンター・執行クリニック院長 執行友成医師

子どもを含め年間30万症例もある鼠径ヘルニア、わずか25分の手術で再発率1%以下に

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 執行クリニックでは、この鼠蹊ヘルニアの手術を日帰りで行なっているが、本当に「日帰り」できるのだろうか?

 「その日のうちに帰宅していただけるのは、片道1時間でおいでいただける方だけの限定です。何か起こった時には責任問題にもなりますから。また、他の病院で手術して再発した場合など難しい患者さんが回されてくることもあり、そういった場合は手術も簡単ではなく、日帰りできないことのほうが多い。全国からいらっしゃる患者さんのため、2003年に有床診療所D.S.マイクリニックを開院いたしました」

 手術法は?

 「かつては、お腹を3cmほど切って、飛び出している腸を戻し、周囲の筋肉を引き寄せて縫い合わせる方法が一般的でしたが、回復に時間がかかるうえ再発率が10%近くあります。当クリニックでは、ポリプロピレン製のメッシュを穴に入れて塞ぎ、別のメッシュで補強する方法(テンションフリー法)を取っています。手術にかかる時間は、平均25分程度。再発率は1%以下です。腹腔鏡を使った手術のTAPP(trans abdominal pre peritoneal)法もあり、患者さんの希望に添うようにしていますが、こちらは血管損傷や神経損傷など合併症のリスクがある。解剖学的に鼠蹊管は3次元的なものがあるので難しさもありますが、7000件もこなすとフィーリングでわかってきます」

 手術で使用するメッシュ素材は、執行医師がドイツへ行った時に見せてもらい、日本でもぜひ使いたいと考え、厚労省へ認可申請をして使用が実現したもの。多くの患者へ安心できる素材を提供したいという熱意が実った。

患者の情報収集能力が上がった!

 テレビでバラエティ番組のような医療番組が増えたが、執行医師は快く思っていない。

 「ウソばかりとは言いませんが、テレビは女性に受ける"感動もの"しか採用しない。ドラマチックに見せることに主眼を置いているようです」

 一方、インターネットで医療情報をしっかりとキャッチする患者が多くなったことを、執行医師は実感している。

 「10年ほど前までは、患者さんは医療情報がとてもプアで、医師や看護師に言われるまま治療を受けていました。しかし今は、ネットにより正しい医療情報をつかめるようになりましたから、選択肢が広がった。当クリニックの初診申し込みは、ネット経由が7割も占めています」

 執行クリニックに訪れる患者の多くは、鼠蹊ヘルニアの情報をプリントアウトして持ってくる人が多いという。ネットにより、人任せの医療から、自分で選ぶ医療へと確実に変わって来ている。
(文=編集部)

執行友成(しぎょう・ともしげ)

東京ヘルニアセンター・執行クリニック院長、神楽坂DSマイクリニック院長、日本短期滞在外科手術研究会代表世話人。1952年、東京生まれ。1981年、東京医科大学卒業後、東京警察病院外科に入局。1991年、執行クリニックを開院。1998年には神楽坂訪問看護ステーションを、2001年には神楽坂ヘルパーステーションを開設するなど、在宅医療にも深く関わる。2003年に神楽坂DSマイクリニックを開設。著書に『鼠蹊ヘルニア(脱腸)は、入院しなくても治る!』(如月出版)がある。

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