魚肉に多く含まれるアミノ酸がヒスタミンを生成 MON/PIXTA(ピクスタ)
マグロの刺身を食べたらなんだか舌がピリピリする......。そんな経験をしたことはないだろうか? 普段、何気なく食べているマグロやサバ、カツオ、サンマ、イワシなどの赤身魚と青身魚は、ちょっとした温度管理ミスで食中毒のような症状が起きることがある。さすがに生魚を長時間、常温で放っておく人は少ないだろうが、実は缶詰でもそのリスクがある。
あの「はごろもフーズ」が2013年10月、製造・販売するシーチキン缶にアレルギー物質が発生したとして、3種・計672万個を自主回収した過去がある。食べた消費者が、口の中の痒みや違和感を訴えたという。特に目立った健康被害はないとされ、それほど大事にはならずに済んだ。
アレルギー物質が発生した原因は、材料のカツオを冷蔵庫で保存する際に、たまたまいつもより多い量を入れたためにある。庫内の温度にむらが発生して、カツオに含まれるアミノ酸が「ヒスタミン」に変化したことにあるという。
ヒスタミンといえば、花粉症の話題のときによく目にする機会がある言葉だ。花粉などのアレルギー症状を誘引する物質が体内に入ると、ヒスタミンが体内で放出され、くしゃみや鼻水などの症状となって現れる。このヒスタミンが、何らかの原因で増殖した魚肉を口にすると、まるでアレルギー症状に似たような食中毒が起きるのである。
ヒスタミン食中毒は身近に起き得る!?
ヒスタミン食中毒が起きるメカニズムを、もう少し詳しく見てみよう。ヒスタミンは、本マグロやカツオ、カジキ、ブリなどの魚肉の中に多く含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸が、酵素の働きで変化することで生成される。これらの魚を室温などで放置していると、ヒスチジンをヒスタミンに変える酵素を持つ細菌が増殖し、魚肉内にヒスタミンが蓄積してしまうのだ。
ヒスタミンが大量に発生した魚肉を食べると、直後から1時間以内に、口の周りや耳が赤く腫れたり、じんましんが起きたりする。ほかにも、悪心、嘔吐や下痢、腹痛、頭痛などアレルギーのような症状が出る。実際は、比較的軽度で済み、一日程度で症状が収まるのがほとんどだといわれているが、心臓や呼吸器に疾患がある場合には、重症をきたす可能性もあるという。