同性婚に反対する人々の多くは、結婚とは別の制度として「シビル・ユニオン」という概念を支持している。だが、ニューヨークの精神科医Jack Drescher氏は、結婚に求められる社会的利益と法的保護を分けて考えることはできないとし、「結婚を否定されることによる混乱は、多大な不安や不確実性を生じさせる」という。
そして、精神疫学者のIlan Meyer氏は「合法化は、偏見に対抗する象徴的な表明になる」という。さらに、性的少数者を「結婚」という制度の対象に含めることは、敬意、尊厳、一体性という強いメッセージを送り、拒絶を覆すものだと、同氏は付け加えている。
同性愛者は近年、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー/性同一性障害者)と称される。彼らはセクシャル・マイノリティであるだけでなく、偏見や差別の対象になり、社会的な損失を被ることがある。
そのようななかで、自己肯定感を保つのは至難だ。LGBTのうつ病発症率、さらには自殺率が高いのは、世界的に周知されたことで、欧米ではその調査研究も盛んだ。日本でも、内閣府の自殺総合対策大綱の2012年改正版には、自殺のハイリスク層に「性的マイノリティ」が加わった。
とくに若者は、いつ誰に「カミングアウト」するか、というストレスが非常に大きく、苦悩の時期を送る。親や友だちにも頼れず、孤立無援の「サバイバー」にならざるを得ない。
なんとか生き延び、仲間やパートナーを見出してからも、自己開示してのびのびと暮らせない葛藤がついて回る。性的な悩みよりは、社会的弱者としての困難が重圧となる。なかでも大きな困難が「結婚」だ。
今年4月、電通ダイバーシティ・ラボが「日本では全国民の7.6%がセクシャル・マイノリティ」という調査結果を発表した。2012年の調査結果は5.2%で、この3年で2.45%増加していることになる。
日本では「13人に1人がLGBT」という時代。今後、社会的権利を手にして社会的重圧から解き放たれていくことだろう。ただし、深刻なメンタルヘルスの問題改善は、その先にあることを忘れてはならない。
(文=編集部)