梅毒とエイズの不思議な関係。感染広げる男性同士のコミュニティー

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男性の梅毒感染は半数が同性同士の性交渉

 セックスなど性行為を通じて感染する「性感染症」として知られる「梅毒」。実は最近になって大都市圏の若い世代を中心に患者が急増している。古くからある病気だけに治療法はあるのだが、感染に気付かなかったり、しっかりとした治療を行わなかったりすることで、感染を広めてしまっているようだ。愛する家族やパートナーを苦しめないためにも、感染しないことはもちろん、感染したときの早期検査、早期治療は重要だ。
 
 そもそも、梅毒ってなんだろう。これは「梅毒トレポネーマ」という細菌が、性行為によって皮膚や粘膜の小さい傷から体の中に侵入し、感染する病気だ。3週間ほどの潜伏期間の後、感染した場所にしこりが発生し、その後、2~3カ月ほど経過すると、全身にあざや発疹が現われる。さらに3年ほど経過すると、心臓や血管、神経、目などに重い障害が発生し、死に至ることもある。治療法のない時代は、感染者はその症状に苦しんだが、ペニシリンなどの抗生物質が登場してからは完治できる病気となった。先進国では抗生物質が普及しているため死亡例はまれだ。ただ、妊娠中の女性が梅毒にかかると、胎盤を通じて胎児に感染してしまうため、放置すれば死産したり、生まれてきてもさまざまな障害を起こす先天梅毒になったりする。決して軽視できる病気ではない。

●エイズ患者と梅毒患者の知られざる相関性

 国立感染症研究所のまとめによると、平成25年の梅毒の報告数は1226人で前年(875人)の1.4倍にのぼっている。全体の8割(989人)を占める男性の発症者を年齢別でみると、最も多いのは25~29歳、次いで35~39歳だ。一方、女性では20~24歳が最も多く、25~29歳が続いている。東京や大阪、愛知、神奈川といった都市圏で報告数が多いのも特徴という。
 
 感染経路は男性と女性では大きく異なる。男性の場合、87・1%が性的接触で感染しているが、その中で最も多いのは、同性間の性的接触で、50・2%と半数を占めている一方、女性は性的接触の感染例は67・5%、このうち最も多いのは異性間の性的接触で88・1%だ。
 
 梅毒は、通常のセックスのほか、アナルセックスでの感染が多いとされており、オーラルセックスでも感染することが知られている。こうした状況から、いわゆる男性同士のコミュニティーの間で感染が広がっている可能性が指摘されている。実は梅毒に感染していると、エイズウイルス(HIV)に数倍感染しやすいとされているので、エイズコミュニティの中に梅毒感染者が潜んでいる可能性もある。
 
では、どうすればいいか。コンドームの使用で感染リスクは減少するが、完全に防げるわけではないことも覚えておかなければならない。大事なのは、梅毒が広がっていることを十分自覚し、感染した場合はすぐに検査を受けに行くことだ。
 
 東京都では現在、保健所や保健センターで、匿名・無料の検査が受けられるなど、自治体による無料検査も各地で行われている。厚生労働省の研究班がインターネットで提供している「HIV検査相談マップ」で、HIV以外の性感染症の検査や相談の窓口を検索すると、保健所など500件近い検査施設を調べることができる。少しでも不安なことがあれば、こちらを活用することを考えてほしい。何はともあれ早期検査、早期治療を心がけよう。

(文=編集部)

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