シリーズ 感染症NOW!終わりなき闘い 第4回

MERSはラクダからヒトへと感染! アウトブレイクやパンデミックに発展する可能性は?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
mers004.jpg

MERSのラクダからヒトへの感染は現在も続いている

shutterstock.com

 MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスの感染収束の道筋が、まったく見えない。

 WHO(世界保健機関)は、5月31日までに報告されたMERSコロナウイルスによる感染者は1180人、死者は483人(致死率40%)と公表した。ほとんどはサウジアラビアとアラブ首長国連邦で発生し、最も患者数が多いサウジアラビアでは、感染者が1016人、死者が447人(致死率44%)。欧州、米国、アジアでも、中東からの旅行者や旅行者と接触した人のMERS発症の報告がある。二次感染は、家族内と病院内で多発している。

 7月3日、サウジアラビア保健省は、2012年以来のMERSコロナウイルスによる感染者は688人(死者を含む)、死者は282人と発表。感染者688人のうち、353人は回復、53人は治療中という。また、7月5日、韓国保健福祉省は、MERSコロナウイルスの感染者は186人、死者は33人と明らかにしている。

MERSの宿主はヒトコブラクダ

 6月3日、イギリス・ロンドン大学の研究者らは、MERSのアウトブレイク(集団大発生)とパンデミック(世界的流行)の可能性などを解説したレビューを「Lancet」誌電子版に発表した。レビューによれば、MERSが初めて発見されたのは、2012年6月にサウジアラビアのジッダで重症呼吸器疾患によって死亡した患者だった。

 MERSコロナウイルスの宿主は、ヒトコブラクダだ。 MERSコロナウイルスに感染したラクダは、軽症の鼻炎を発症するが、全身性の疾患はない。ウイルスは、数日間にわたって排出され、ラクダからラクダへ、 ラクダからヒトへと感染が広がった。ラクダと接触した発症者はわずかなため、ヒトからヒトへの感染がほとんどだ。ヒトへの感染の多くは、接触感染と飛沫感染が明らかだが、詳しいウイルスの伝播様式は不明だ。

 血液、尿、便にもウイルスRNAが検出される発症者もあるが、気道に存在するウイルス量に比べればごく少ない。ウイルスは、上気道よりも下気道(気管吸引物、気管支肺胞洗浄液)に多く存在する。発症から1カ月後も、多くの患者の下気道にウイルスが存在するのは、長期間にわたって、ヒトからヒトへと感染する可能性を物語っている。

発症から死亡までの日数は11.5日

 MERSの病態は、無症候または軽症の症例から、急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック、多臓器不全による死亡に至るまで実に幅広い。潜伏期間の平均は5.2日、一次感染者の発症から二次感染者の発症までの期間(serial interval)は7.6日だ。

 発症者の98%は成人で、男性が64.5%。年齢の中央値は50歳。発症者の76%は併存疾患がある。致死率は約40%、併存疾患があった発症者の致死率は約60%。発症から補助換気が必要になるまでの日数の中央値は7日間、発症から死亡までの日数の中央値は11.5日だ。

  発症者に多く見られる症状は、発熱(98%)、悪寒(87%)、咳(83%)、息切れ(72%)、乾いた咳(56%)、湿性の咳(44%)、倦怠感(38%)、筋肉痛(32%)、下痢(26%)、悪心(21%)、嘔吐(21%)、咽喉痛(14%)、喀血(17%)、頭痛 (11%)、鼻水(6%) など。90~100%に胸部X線画像の異常のほか、乳酸脱水素酵素値の上昇(48%)、血小板減少症(36%)、リンパ球減少症(32%)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素値の上昇(14%)、白血球減少症(14%)、アラニンアミノ基転移酵素値の上昇(11%)が認められている。

ウイルス変異が起きればパンデミックか?

除菌で虫歯と歯周病を予防する「3DS」~薬を塗ったマウスピースを5分間はめるだけ
インタビュー 口腔内を除菌して全身疾患を予防する「3DS除菌」② 鶴見大学歯学部・探索歯科講座 花田信弘教授/山田秀則助教

第1回:口腔内の雑菌は100億個以上~<除菌治療>が歯周病と生活習慣病を防ぐ!
虫歯や歯周病の原因菌が、生活習慣病を引き起こす発症リスクになることがわかっているため、今後は虫歯や歯周病を直接治療するだけに留まらず、「予防歯科」の必要性が近年ますます高まってくる。鶴見大学歯学部付属病院では、3DSという治療法を用いて、歯科治療のみならず、全身疾患の予防を目的に画期的な専門外科を開設している。

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジ…

横山隆

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪…

三木貴弘