シリーズ 感染症NOW!終わりなき闘い 第2回

致死率27%のMERSパニック! ヒトからヒトへの感染はなぜ起きた?

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WHO(世界保健機関)によればMERSの致死率は27%

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 MERS(中東呼吸器症候群)が韓国の医療機関で広がっている。6月22日、韓国保健福祉省は、MERSに感染して死亡した人が合計27人になったと発表。死者を含めた感染者数は、24日時点で179人に上っている。

 MERSは、2012年にサウジアラビアで初めて発見され、中東を中心に流行したウイルスの新顔。2002年から2003年に流行したSARS(重症呼吸器症候群)と同じコロナウイルスの仲間だ。太陽のコロナのような外観を持つコロナウイルスは、ヒトに感染しやすいウイルスではないらしい。しかし、韓国では免疫力が落ちた患者がウイルスのターゲットになり、医療機関内でヒトからヒトへ感染が拡大している。

 当初はラクダからの感染症と考えられた。だが、2013年に見つかったフランスとイギリスの症例は、ヒトからヒトへの感染だ。ヒト、ラクダのほか、ブタ、コウモリでも感染するが、感染経路はまだ完全に解明されていない。MERSを引き起こすコロナウイルスは、低温度・低湿度なら約48時間は生存する。

致死率はSARSが9.4%に対してMERSは27%!

 MERSに感染すると、急激な発熱、咳、下痢に襲われる。重症化すれば、肺炎、敗血症、腎不全などを併発して死亡する。SARSと同様に、乳幼児や高齢者のほか、糖尿病、慢性肺疾患、がんなど、免疫力が低下している人は重症化しやすい。

 MERSの感染力はSARSとどのように異なるのか?

  感染症に詳しい医療法人財団綜友会医学研究所の木村もりよ所長は、KRIC医療ガバナンス学会のメールマガジンに「MERSコロナウイルス感染症、韓国流行を受けて」を寄稿し、MERSの脅威を伝えている。

 記事によれば、MERSは、SARSと同じように、咳、くしゃみのしぶきの中にあるコロナウイルスが口や鼻の粘膜から入る飛沫感染で感染する。WHO(世界保健機関)が発表した重症化のしやすさを示す致死率は、SARSが9.4%、MERSが27%。木村所長は、MERSの感染力の恐ろしさを強調する。

ヒトへの感染を止められないのか?

 木村所長によると、MERSはヒト、ブタ、コウモリなどの生物種を超えて感染する感染症だが、SARSコロナウイルスが流行した時は、すでにコウモリに対する感染力は失われていたという。MERSは、この点でSARSと大きく異なる。というのは、MERSの流行が収束しても、コウモリなどに感染が受け継がれるならば、数年後、ヒトに再感染する恐れがあるからだ。木村所長の懸念は消えない。

 では、ヒトに感染する強さはどの程度なのか?

 医学雑誌『The Lancet』(2014年1月号)によれば、MERSコロナウイルスが患者1人を感染させる強さ(Reproductive number/Ro)は、0.8~1.3価。1価(1人の患者が別の1人に感染させる力価)を大きく上回らないため、感染力はさほど強くないと評価している。

 しかし、2014年12月、同誌に発表された論文では、MERSコロナウイルスの感染力の強さを示すRoは、前述の論文より高い評価だ。つまり、致死率も考慮すれば、MERSコロナウイルスはSARSコロナウイルスに匹敵するか、それ以上に蔓延する恐れは十分にある。

 しかも、韓国で広がっているMERSの感染は、医療機関内で患者と接触した医師や看護師などの医療従事者を介して蔓延している。感染の機序から判断すれば、日本でも医療機関内での感染に備える必要があるだろう。
(文=編集部)

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