シリーズ 感染症NOW!終わりなき闘い 第4回

MERSはラクダからヒトへと感染! アウトブレイクやパンデミックに発展する可能性は?

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 では、どのような発症者が重症化しているのだろうか? 重症化または死亡する主因は、免疫不全、併存疾患(肥満、糖尿病、心疾患、肺疾患)、感染症の併存、アルブミン低値、高齢(65歳以上)など。最も重い症例では、急性肺炎を発症したり、低酸素症による損傷や腎臓への感染が原因で腎機能が低下している。健康な人は感染しにくく、感染しても無症候から軽症に留まる。

 現在、MERSに特異的な治療はない。培養細胞を用いた実験では、MERSコロナウイルスの増殖抑制効果が見られるのは、タイプ1インターフェロン、シクロスポリン、ミコフェノール酸、クロロキン、クロルプロマジン、ロペラミン、ロピナビルなどだ。現時点では、重症患者にはICU(集中治療室)での注意深い管理と合併症予防を行うことが最善策だ。

 そして、MERSの予防法は、あるのだろうか?

 WHO、CDC、サウジアラビア保健省は、次のようにMERS感染予防策を勧告している。飛沫感染の予防のために、感染者から1m以内に近づく時は、サージカルマスクを着用する。接触感染の予防のために、感染者の病室に入室する時は、ガウン、グローブを着用する。発症者の治療に当たる医療従事者は、ゴーグルも着用する。空気感染の予防のために、空気感染の可能性を想定し、院内感染を防ぐ陰圧個室に発症者を収容するなどだ。

 韓国で行われているMERS感染予防策をまとめると――。外出から帰ったら石鹸でよく手を洗いするか、速乾性アルコール剤で手指を消毒しよう。必要がなければ、病院へ行かない、連れて行かない。人ごみや咳をしている人を避けよう。マスクを常用しよう。メディアの情報に惑わされない。韓国保健福祉省や日本大使館・総領事館などのHPの更新情報をチェックしよう。「知識のワクチン」で正しく冷静に判断しよう。

 MERSのパンデミックは起きるのか? MERSコロナウイルスの感染力は、決して大きいものではない。このシリーズの第2回(http://healthpress.jp/2015/06/27mers.html)で紹介したように、医学雑誌「The Lancet」(2014年1月号)によれば、MERSコロナウイルスが患者1人を感染させる強さ(Reproductive number/Ro)は、0.8~1.3価だ。1価(1人の患者が別の1人に感染させる力価)を大きく上回らないため、感染力はさほど強くないと思われる。通常、Roが1を下回る場合、感染は自然に収束するはずだからだ。

 にもかかわらず、MERSの感染が収束しないのは、MERSが中東特有の感染症であり、ラクダからヒトへの感染が継続的に発生しているからだと考えられている。MERSコロナウイルスの変異速度は速い。MERSコロナウイルスが変異し、ヒトからヒトへの感染頻度が高まれば、パンデミックが発生する恐れは十分にある。ただ、病原性を強めたり、ヒトからヒトへの感染の能力を高めたりする変異は、幸いにも発見されていない。

 厚生労働省は、各都道府県や保健所を設置する自治体に対して、MERSが疑われる発症者への対応策や院内感染対策を徹底するよう通知した。各国の政府、保健当局、研究者も、変異が生じた場合に備えて、即応できる万全の態勢を整えておいてほしい。
(文=編集部)

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Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

里中高志

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

鈴木龍太

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

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