ところが、費用が安いのにはそれなりの理由がある。介護施設として国の基準を満たしていないため、車椅子での移動が困難だったり、個室ではなかったり、防火設備がお粗末だったり。
また、宿泊するスタッフがいない、食事が出ないなど、ずさんな運営をする施設もあり、さらには虐待されているケースまである。保健所の指導が入らないため感染症が蔓延し、数カ月間で20人以上が亡くなった施設もある。
行政の目が行き届かない無届け介護ハウスは、国が把握しているだけで全国に911、東京都内に86カ所あるという。ずさんな運営をしている施設は一部だけかもしれないが、そうとわかっていてもお金がなくて行き場のない高齢者は入所せざるを得ない現実がある。行政や病院から紹介されるケースもあるが、あわてて契約せずに下見をしてから決めたい。
格差が広がる日本。せめて終の住処は、心配事なく穏やかに暮らせる場所であってほしい。しかし、それも当たり外れがあるのなら、当たりを引くことを祈るばかりだ。
(文=編集部)