虫垂(盲腸)炎は手術するべきか?薬で"ちらす"べきか? よーく考えたい

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盲腸は手術と薬、どちらが正解?shutterstock.com

 虫垂(盲腸)の外科的切除は1世紀以上にわたり標準治療とされてきたが、抗生物質による治療を受けた患者の多くは切除手術を回避できることが、新たな研究で明らかにされた。研究著者であるフィンランド、トゥルク大学病院のPaulina Salminen氏によると、虫垂炎を起こした患者の約80%は外科手術を受ける必要はなく、最終的に手術が必要になる患者でも、しばらく様子を見ても問題はないという。

 Salminen氏は、「今では虫垂炎患者のうち緊急手術を必要とするのはごく一部であることがわかっている」と述べ、虫垂炎には常に外科手術を要するものと、抗生物質で治療できる軽症のものの2種類があると説明している。虫垂炎の大部分は軽症のタイプだが、重症の場合は虫垂の破裂を引き起こすことがあり、このタイプは切除術が必要になる。虫垂炎のタイプはCTで正確に判定できると同氏は付け加えている。

「JAMA」に6月16日掲載された今回の研究では、急性虫垂炎患者530人を、虫垂切除を実施する群と、10日間の抗生物質治療を行う群に無作為に割り付けた。

 その結果、虫垂切除術の成功率は99.6%だった。抗生物質を用いて治療し、1年間経過観察した群のうち、73%は手術を必要としなかったが、27%は1年以内に虫垂切除が必要になった。しかし、手術を遅らせたことによる大きな合併症はみられなかったという。

 同誌の副編集長で付随論説の共著者であるEdward Livingston氏は、「虫垂切除術が行われるようになった理由は歴史の闇のなかであるが、今ではあまりにも日常的な治療となり、虫垂炎患者が来ればすぐ手術室に送られるようになっている」と述べている。

 しかし、130年の間に状況は大きく変わり、CTによる正確な診断が可能となり、強力な抗生物質も利用できるようになったことから、虫垂炎の治療法を見直す必要が出てきたと同氏は話す。

盲腸の治療費が800万円?

 米国では年間30万件を超える虫垂切除術が実施されているが、ほとんどの患者は抗生物質のみで治療することが可能だという。抗生物質を投与して様子を見、再発がみられる場合は切除すればよく、手術の遅延による合併症の心配もないとLivingston氏は説明している。虫垂切除術は通常は忍容性良好であるが、リスクや痛みがあり、費用もかかる。

「私は外科医だが、できるなら手術を受けずに一生を過ごしたい。抗生物質という選択肢があるなら迷わずそちらを選ぶ」と同氏は述べている。

 日本での虫垂炎の患者数は約7万人程度だと言われるが、減少傾向にある。それでも日本における虫垂炎の手術数は約6万件と言われ、全日本病院協会の平成26年度のデータでは虫垂炎のほぼ7割が手術となっている。この数字が高いか低いかは分からない。国民皆保険に胡坐をかきすぎて不必要な手術が実施されている傾向もがあるかもしれない。

 さらに費用はと言えば、日本では症状の程度にもよるが、手術して1週間程度の入院だと入院費・手術代込みで8万~12万程度だ。しかしアメリカではどうか。国民皆保険ではないアメリカで民間の医療保険に入っていたとしても負担額が150万円とも200万円とも言われる。無保険者であれば800万円という報告もあり、盲腸ひとつで生活が破綻しかねない。こんな国では病気にかかれない。オバマケアで保険加入者は増えたのだろうが、それにしても医療費が高すぎる。

 今回の調査は、フィンランドで行われたものだが、アメリカのメディアである「JAMA」が掲載したものだから、こうしたアメリカの異様ともいえる高額な医療費の背景を抜きには考えられないのではないか。
(文=編集部)

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