連載第7回 いつかは自分も……他人事ではない“男の介護”

介護に「成果主義」を持ち込むな! 男性にありがちな「完璧主義」の落とし穴

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介護を「仕事」のように考えてはダメ よっし/PIXTA(ピクスタ)

 男性の介護は、とかく完璧を求める傾向にある。特に、それまでビジネス社会で生きてきた人は、介護を仕事のように考えてしまい、質の高いものを求めがちだ。「やるからには徹底的に」「手抜きせずに精一杯やる」という意気込みは一見よさそうだが......。

 その思いは被介護者に向かい、動かない足を動かそうと努力させたり、食欲がないのに無理に食べさせたり、新しい機器を導入してみたりする。スケジュールをきっちり立て、決まった分量の食事をとらせ、さまざまな工夫でよりよい介護を行おうと努力する。よくいえば向上心があり研究熱心でけっこうなことだが、最初はつき合っていた相手も、そのうち疲れてくるだろう。

 自分がいくら努力しても、相手に「嫌だ」と拒否されることもある。特に認知症の場合などは、介護者が立てたプランをスムーズに遂行できることのほうが少ないだろう。

 また、子どもの成長とは反対に、昨日より今日、今日より明日と、できないことが次第に増えて行くのが介護。寂しいことだが、老いと正面から向き合わなくてはならない。ビジネス社会の成果主義を介護の世界に持ち込むのは、そもそも無理があるのだ。

やり手社員だった自分がトラブルメーカー!?

 

 男性の完璧主義は、外にも向かう。

 訪問ヘルパーに「料理の味が濃い」と言ってみたり、「このタオルは○○用で、こちらのタオルで××してください」と細かい注文をつけたりする男性も決して少なくない。自分の求める介護に応えてもらえないと、あっさりケアマネジャーをすげ替えることもあり、そんなことが度重なると業者からはクレーマーのレッテルを貼られてしまう。

 なかには、結局、他人には任せられないと、介護サービスをすべて打ち切り、一人ですべてを抱え込み、葛藤を深める男性介護者もいる。目標を設定してひたすら成果を追い求めるビジネスモデルのような介護スタイルが、社会との関わりを疎遠にし、孤立に向かわせるのだ。

 社会学者・春日キスヨは著書『変わる家族と介護』(講談社現代新書)のなかで、次のように記している。

「介護を、女性のように慣習に従って引き受けたのではなく、自らの選択意思で引き受けたことが、こうした(介護事件の温床となるような)男性介護者の弱点と言われることにつながっているのではないだろうか」

 私も同感である。そして、自分の意思で引き受けたわけではない、自分しかいないのだから、という男性がいることにも注意を促したいと思う。夫や息子としての過剰な責任感と固い意思で介護役割を引き受ける人、こんなはずではなかったと戸惑いながらも介護する人、いずれもが男性介護者の典型である。

 確たる意思をもって、あるいは戸惑いながらも慣れ親しんだビジネスモデルの介護に傾斜する男性介護者を、社会学者の上野千鶴子は叱る。

「妻の介護に達成目標や課題を掲げ、ネットワークを活用して社会的資源を動員し、『思いどおりの介護』を妻に強いる例もあることが知られている。一見、愛情からに見えるが実は自己満足」

 介護の放棄だけでなく過剰な介護もまた、当事者にとっては「不適切な介護」と手厳しい(上野千鶴子「女はあなたを看取らない」『中央公論』2007年11月号)。叱られても叱られても、なお心身に染みついたビジネスモデルからの脱却は難しい。


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津止正敏(つどめ・まさとし)
立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。
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津止正敏(つどめ・まさとし)

立命館大学産業社会学部教授。1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。

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津止正敏
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