日本の医工連携は本当に進むのか? 医療機器開発の明日は!?

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日本で医工連携は可能か?shutterstock.com

 1月30日、内閣官房(健康医療戦略室)、文部科学省、厚生労働省、経済産業省は、医療機器の開発初期段階からの事業化、販路の開拓に至るまで切れ目なく支援する「医療機器開発支援ネットワーク」の活動の一環として、事業者と全国各地の地域支援機関などとの連携・情報共有を促進するため「第 1回全国医療機器開発会議」を都内で開催した。

 安倍内閣の掲げる「健康・医療戦略」のひとつとしては、「国民の健康寿命の延伸」の実現があり、そのためには関係機関の相互連携・協力の必要性が掲げられている。さらに成長戦略としても医療分野は大きな柱となっている。

 世界の医療機器市場の伸びと同時に国内市場も規模を拡大し、平成25年には約2.7兆円となっている。このため、企業・大学などが新たに医療機器産業に参入し、事業化に取り組む環境の整備は急務となっていた。昨年10月末には、医工連携により 医療現場のニーズに応える開発・実用化を推進する「医療機器開発支援ネットワーク」を立ち上げ、今回は情報の一元化を実現させた形だ。

 これまで各省庁や組織が独自の基準や予算で医療機器開発の支援策を講じてきたが、冒頭挨拶に立ったのが内閣官房健康・医療戦略室の和泉洋人室長、オールジャパン体制を強く印象付けた。
 
 参加者に配布された「医療機器開発支援ハンドブック」では、「シーズ発掘」、「技術開発」、「臨床評価」、「安全性評価・薬事申請」、「販路開拓・経営相談」、「資金供給」、「地域支援機関」などの項目に沿って、関係する省庁、機関などが提供する支援策の概要、相談窓口などが明記されており、新規参入企業には、相談の受け付けから支援チームの組織、継続的なコンサルを行う"伴走コンサル"体制を打ち出している。

 中でも注目されるのが厚労、文部、経産など各省の予算を一元化し、基礎研究を治療や製品などの実用化につなげることを目指し、この4月に発足する日本医療研究開発機構だ。日本版NIH(アメリカ国立衛生研究所)をめざし国や大学、企業からの約300人体制を組み、すでに27年度は合計で1248億円が計上されている。しかし予算の付け替えと新しい天下り先の確保ではという批判もある。また、今回の「第 1回全国医療機器開発会議」は、主に医療機器開発を目指す中小企業やベンチャー企業を対象としており、医療機器開発に不可欠な医療側の参加が極めて少ないことが気になる。

医療側が機器開発にどう関わるかが課題

 医療機器の開発は、日本が得意としてきた「ものづくり」技術を生かせる分野だが、これまでも医学分野と工学分野の連携が十分ではなかった。この課題をどう克服するのかの視点が欠落している。

 8K内視鏡の開発に独自の医工連携チームを立ち上げ、新しい画像診断技術の開発に取り組む技術者はこう語る。
「医療機器を開発している技術者は同業同士で集まって会を作っている。そこにはメディカルドクターや看護師もいない。医師は医師でふんぞり返ってばかりで使えるものをもってこいという態度。そこには本当に使える医療機器が開発される環境にはない。大学にも医工連携を目指すものがいくつかある、基本的にはいずれも片方の立場に立ったものばかり。お互いに技術の現状と医療の現場をよく知り、同じ土俵で踏み込んだ議論をできる環境が日本にはこれまでにはなかった。」
 
 こんな経験もしたという。医療機器開発を進める中で海外の医学物理学者と知り合い、所属するカナダのサニーブルック・ヘルス・サイエンス・センター(Sunnybrook Health Sciences Centre)を訪問した。専門の医療スタッフとボランティア1万人以上を擁し、毎年100万人の患者を治療する巨大な医療機関だが、この病院にはCT、MRI、X線イメージングなどの画像診断を研究する技術者や研究者が大量に在籍し、そこで博士号(Ph.D.)を取得するための学生が病院全体では二百数十人以上集まってきていた。現場の医者と医学物理学者と技術者が一緒になって医療現場に直結して開発している。

「GEやフィリップスなど世界市場で大きなシェアを獲得している巨大な企業にはこうした場所で育った人材が大量に入っていく。本当に医療サイドと工学サイドががっちりと手を組まなければ、世界に通用する革新的な医療機器の製品化は難しい」(同氏)
 成長戦略の大きな柱として掲げられた医療機器開発。これからが正念場だ。
(文=編集部)

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