日本発の技術と医工連携で完成まぢか 8K内視鏡は世界の手術を変える

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杏林大学で行われた世界初のオペ ©2013-14 Medical Imaging Consortium

 

 昨年12月、都内で「超高精細8K画像技術の臨床的応用について、ヒトの内視鏡・顕微鏡手術」と題される記者会見が開催された。世界で始めて8K内視鏡を使用したヒトでの手術が成功したことが報告された。
 
 8Kはスーパーハイビジョンとも呼ばれる超高解像度映像技術で、NHKが開発を進めており、2018年には実用放送化開始予定となっている。通常のフルハイビジョン(2K)が200万画素であるのに対し8Kはその16倍、3300万画素を持つ。これを視力で表現すると4,27の視力ということになる。説明されても体験しないとなかなか分からない世界だ。

 NHKは8K映像と22.2chの音響で、ロンドンオリンピックのパブリックビューイングを開幕期間である約2週間に渡って実施したが、その臨場感に驚きの声が上がった。あるいは大手家電量販店で最近増えた4K(829万画素)のモニターで見ることのできる世界よりさらに4倍凄いということになる。

 この8Kは純粋に日本発の最先端画像技術だが、これまでは、その応用に関する検討のほとんどが、放送や遠隔の画像伝送を中心としたものだった。この8K技術を、内視鏡手術という医療面に応用できるのではないかと発想した自然発生的なグループが、独自のネットワークを作り上げてきた。

医師や患者への負担が少なくミスの無い内視鏡手術は可能に

 記者会見を主催した一般社団法人メディカル・イメージング・コンソーシアム(MIC)は、スーパーハイビジョン(8K)の超高精細画像技術や超高感度カメラ技術等の医療応用をメインテーマとして掲げ、大学・病院の医師、機器メーカーや関連団体などの技術者・研究者が協力して医療現場での実用化を目指し、医学従事者及び工学従事者間の連携(いわゆる医工連携)によって医療機器開発の促進や国民への医療サービスの高度化を目指す団体の一つだ。8K内視鏡に関しては、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)やNHK放送技術研究所(同)などを中心となり、この医療機器開発に取り組んできた。

 2013年12月7日には、動物(ブタ)使用での腹腔鏡手術で十分な成果を得、翌2014年11月10日には杏林大学病院(東京都三鷹市)で、有効性などを確認する臨床研究として70歳代男性2人の胆のう摘出手術が行われ、遂に世界初のヒトでの8K内視鏡手術が成功している。同年12月5日には、三宅病院(愛知県名古屋市)で8K顕微鏡を用いた眼科領域の手術にも成功している。

 この8K内視鏡開発のプロジェクトリーダー的な役割を務めMICの代表でもある千葉敏雄・国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター 副センター長は次のように語る。
「手術を担当した本人で無いとなかなか実感できないが、画像が非常に鮮明で、立体感にあふれ細部の認識が飛躍的に高まることが確認された。今後の内視鏡手術に革命的な変化をもたらす可能性があると期待している」とし、早期の実用化を目指すとしている。
 
 いったい8K内視鏡を利用するとどんなメリットがあるのか。
①広い術野の確保が可能になることだ。従来の内視鏡では患部を拡大してみようとする場合、内視鏡自体を手術器具がある空間まで近づけなければならなかった。しかし、8K内視鏡であれば引いた位置からのズームで十分に鮮明な画像が得られる。結果として広い手術空間を確保しながらの作業が可能になる。
②高精細・高分解能の画像では、細い血管や神経、臓器同士の協会の識別が可能になるため、ミスが少なく安全な手術が気安納になる。
③大画面、臨場感の高さから、遠隔医療や医療教育などでの活用が期待される。

 これまで、腹部や眼科領域での顕微鏡手術で成果を上げたが、今後は心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、耳鼻科領域での手術への導入も可能だ。
 
 しかし、改善すべき点や更なる改良店も少なくない。現在のカメラは重さ約2・2キロある。まだ片手で操作できるホドには軽くない。また、3D立体視、超高感度化、オートフォーカス化など改良の余地はないなど課題もある。当然、カメラから得られた画像を映し出す医療用8Kモニターの開発も同時に進めていかなければならない。
 日本発の新技術が世界の内視鏡医療の分野に革新をもたらすことになるのか、見守りたい。
(文=編集部)