3度目の皮膚がんの治療を受けた俳優のヒュー・ジャックマンEverett Collection / Shutterstock.com
映画『X-MEN』や『ニューヨークの恋人』『レ・ミゼラブル』などでおなじみの俳優ヒュー・ジャックマンが、昨年3度目の皮膚がんの治療を受けた。経過は順調ということだが、その原因について、本人は「オーストラリアで育った少年時代、全く予防せずに紫外線を浴び、真っ黒に日焼けしていたことが原因」と話したという。
皮膚がんの最大の原因は、紫外線を大量に浴び続けることだ。幼少期から繰り返し紫外線を浴びると、表皮や真皮細胞の遺伝子に傷がつき、いつしか遺伝情報が変性してシミや皮膚がんの原因となる。特に子どもは大人に比べて細胞分裂が盛んなため、紫外線で傷ついた遺伝子がおかしな形に修復される確率が高くなるのだ。
紫外線は遺伝子に傷をつける
これまでの多くの疫学調査では、年間の紫外線照射量が多い地域の住民や、屋外労働者に皮膚がんが多いということのほか、同じ紫外線量でも子供の時に浴びるほど悪い影響が出ることが分かっている。たとえば、年間の紫外線量が少ないイギリスから紫外線量の多いオーストラリアに移住した白人を見ると、10歳までに移り住んだ人や現地で生まれた子どもほど皮膚がんが多く発症している。
WHO(世界保健機構)も「最も紫外線対策が必要なのは子どもである」と訴えている。その理由として「子ども時代は細胞分裂が激しい時期である」「18歳未満の日焼けは後年の皮膚がんや眼のダメージ(特に白内障)発症のリスクを高める」「紫外線被ばくは免疫系の機能低下を引き起こす」ことを挙げている。
しかし、皮膚がんについて言えば、もともとの肌の色が発症率に関わっている。紫外線を浴びると肌が小麦色になるのは、皮膚の中でメラニン色素を合成しているから。メラニンの合成には個人差があり、紫外線を浴びても黒くならない人のほうが美容的にはよいように思われるが、メラニン色素は紫外線から肌を守る働きがあるのだ。
このためメラニン色素の少ない白人ほど紫外線からの防御が薄いから皮膚がんの発症率が高く、メラニン色素の多い黒人は低い。黄色人種の日本人はその中間。白人の皮膚がんは日本人の数十倍だという。
「紫外線=皮膚がん」という知識が徹底している白人は日焼けすることを避け、先のヒュー・ジャックマンも本人はもちろん子どもたちにも日焼け止めを塗ることを徹底させているという。その逆に皮膚がんの発生率の低い日本人は、「小麦色の肌は健康的」という間違った認識があるせいか、海水浴場などで肌を焼く姿が未だに多く見受けられる。
日焼けはやけどなのだと認識し、積極的に肌を焼くのは避けるべきだ。ひと昔はやった日焼けサロンなどもってのほかだ。
6割の母親はUV対策をしていない
2015年1月中旬、常盤薬品工業は、乳幼児や小学生の子どもがいる母親約230人を含む20~59歳の女性1000人を対象にインターネットで「日焼けに」に関するアンケートを実施している。
その結果を見ると、子どもを持つ母親のうち「子どもに日焼け止めを塗るUV対策をしている」と回答したのは42%。「対策をしていない」が58%に上った。また、UV対策をしている母親の中でも、約半数は日常的なケアではなく「海などレジャーに出かける時だけ気にかけてケアをしている」という結果だった。対策をしていない理由は「面倒だから」が最も多く30%。「日焼けしても構わないと思っている」との回答も20%あり、子どものUV対策に関する関心はあまり高くはないようだ。一方で「日焼け止め商品の刺激が気になる」(23%)、「日焼け止めを塗ると皮膚トラブルが起こる」(12%)との理由も。日焼け止めによる子どもの肌への影響を心配する母親も多いことが分かった。
しかし、子どもは誕生してから18歳ごろまでに、生涯に浴びる紫外線量の約半分を浴びてしまうといわれている。紫外線が身体に与える悪い影響、たとえばシミや老化、皮膚がん、白内障のリスクは太陽紫外線被ばくの総量に比例するのだ。だから、子どものUV対策が叫ばれている。
一方で、紫外線を浴びることで生成されるビタミンDが不足することで起こる「くる病」にかかる乳幼児も増えている。食生活も関わっているが、過度に日光を避けることが原因のひとつだと考えられている。
海水浴場などで甲羅干しをするのは絶対によくないが、多少は日光に当たったほうが骨の形成にはいい。紫外線の強い時期、時間には、帽子をかぶったり日傘をさしたりしての10分くらいの散歩など、日焼けをしない程度の日光浴も必要だ。
(文=編集部)