>  >  > 羽生結弦の生死はどちらに転んでもおかしくなかった!?

羽生結弦は極めて危機的な状況にあった!? 致死率50%の「セカンドインパクトシンドローム」とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

中国上海で行われたフィギュアスケートのグランプリシリーズ第3戦中国杯最終日の11月8日、その悲劇は起きた。男子フリーの直前練習で、日本の羽生結弦選手が後ろ向きの滑走から前を向く瞬間に、同じような動きをしていた中国のイエンハン(閻涵)選手と正面衝突。どちらもスピードに乗って振り返ったタイミングだったため、直前に気づくも避けようがなく、羽生選手の額が、イエンハン選手の顎にぶつかり、羽生ははじきとばされるように顔面からリンクに打ちつけられた。ゆっくりと転倒したイエンハン選手はすぐに上半身を起こしたが、羽生選手は一度立ち上がろうとしかけるものの、脳しんとうを起こしたのか、ひざを折ったまま顔を押さえて氷上にうずくまって、動かなくなった。

 イエンハン選手はすぐに試合の棄権を表明したが、額と顎から流血し、より重症と思われる羽生選手は、傷に絆創膏を貼るていどの応急手当をしただけで、再びリンクに戻り、練習を続行。練習でも、ふらふらとして、足はよろけていた。周囲から棄権をすすめられながら、羽生はそれを断る。それに刺激されて、イエンハン選手も棄権を撤回、フリー演技を行うも、満足な演技はできなかった。羽生選手も最初の2回のジャンプをはじめ、計5回、ジャンプの着地に失敗しては転倒していた。

 大怪我しながらのフリー出場で後半にトリプルアクセルを決めるなどして、2位、銀メダルを取った羽生選手の演技に、会場の客はもちろん、日本中が感動の嵐に包まれた。

だが...怪我を押しての出場を周囲が止めなかったことに関して、元陸上競技選手の為末大氏や、元プロテニス選手でテニス指導者でもある松岡修造氏といった一流アスリート、そしてスポーツドクターからは疑問の声が上がった。怪我を押してでも競技を続行することを美談化する日本の風潮を批判する声も少なからず出ている。

 実際、羽生はエキシビションを欠場して、車いす姿で緊急帰国、精密検査を受けている。あごを7針縫い、右耳上は医療用ホチキスで傷口を3カ所留めるなど、頭部への激しい衝撃がうかがわれた。10日の報道では、頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫により、全治2~3週間と診断されたと発表された。

●脳しんとう後短期間で二度目の衝撃で致死率50%以上!

 

「脳しんとう直後に試合を続けるなんてありえない!」スポーツドクターがそう発言するのは、脳しんとう後、24時間は安静にさせ、競技に戻すのは最低でも1週間後というのがスポーツドクターの間では常識だからだ。

 そもそも「脳しんとう」とは何か?脳しんとうは頭部や顎付近への衝撃によって起こる脳機能障害、脳の興奮である。

一般的には、脳に衝撃を受けた後、意識を失ったり、記憶を喪失したり、あるいは混乱して言うことが支離滅裂になったりするような状態を指すと思われている。今回の羽生選手に関しても、コーチは「英語でやりとりできていたので大丈夫と判断した」と語っている。しかし、それは脳しんとうに対する理解が浅い。

 こういった世間の無知により、さまざまな悲劇が起きていることから、2013年12月に、日本脳神経外科学会と日本脳神経外傷学会が共同で「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」を発表している。それによれば、スポーツによる脳しんとうは、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともあり、そのまま競技・練習を続けると、脳しんとうを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがあるので、スポーツによる脳震盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止し、競技・練習への復帰は、脳震盪の症状が完全に消失してから徐々に行うべきとされている。脳しんとうの症状は、意識消失や記憶喪失だけではない。めまい感、バランス感覚がおかしくなる、頭痛 、吐気、視界がぼやけるなども脳しんとうの症状なのだ。

 脳しんとうの重症度は3段階。「軽度」は意識消失がなく15分以内に症状が軽快するもの、「中度」は軽快に15分以上要するもの、「重度」は数秒でも意識消失があるもの。軽度の脳しんとうであれば1週間、中度、重度であれば2週間以上の休養が必要とされている。 今回の羽生選手は、ニュース映像や報道内容から、中度以上の脳しんとうを起こしたことが推測され、すぐに練習や競技を行うなどとんでもない、2週間は休むべき状態だったのだ。

若年性更年期障害を発症しても妊娠できる!? 大切なのは卵巣機能低下の予防法を知ること
インタビュー「若年性更年期障害」第3回 ポートサイド女性総合クリニック「ビバリータ」院長・清水なほみ医師

第1回:まさか20〜30代で更年期障害!?
第2回:20〜30代の「更年期障害」の治療法は?
更年期障害といえば40代後半から50代の病気と思われがちだが、20〜30代で同様の症状が現れる「若年性更年期障害」の患者も増えている。

藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。慶應義塾大…

堤寛

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジ…

横山隆

新宿大腸クリニック院長。1988年、東京大学医学…

後藤利夫