子どもにエナジードリンクは必要ないCosti Iosif / Shutterstock.com
さもエネルギーを取り戻しリフレッシュできそうなイメージで今や若年層を中心に世界規模で市場を拡大しているエナジードリンク。日本市場の伸びがもっとも急激で、2009年から2013年にかけて約10倍(318億円規模)と膨れ上がり、2014年には国内メーカーの参入などもあり優に400億円を突破する見込みだ。エナジードリンクの大ヒット商品『レッドブル』だけでも全世界で約46億缶(2011年度)を売り上げており、この勢いは止まらない。
しかし、エナジードリンクをめぐる事故が相次ぎ、その危険性を指摘する医師や研究者は少なくない。特に子どもにとっては極めて重篤な心臓障害や糖尿病、異常行動などを起こしかねないという。
2011年には24時間以内に「モンスター・エナジー」700mlを2本飲んだアメリカの14歳の少女が不整脈で死亡した。2012年にはやはりアメリカで「5-hour energy」というエナジードリンクを飲み、92名が体調不良を訴え、そのうち13名が死亡、33名が入院するという事故があった。また心臓に持病を持った人がエナジードリンクを飲み、心臓発作によって死亡する事故は各国で報告されている。
では死因は何か?
不整脈で死亡した少女の場合、摂取したカフェインの量が問題だった。エナジードリンクには総じて多量のカフェインが含まれている、少女は350mLの缶入りコカコーラの14缶分に相当する480mgのカフェインを取り、結果的に、「カフェインの毒性による不整脈」で死亡した。そもそもカフェインは医薬品に該当し、薬事法では劇薬(使用量をあやまると生命にかかわる薬物)として指定されているのだ。
エナジードリンクにはコーラなどソフトドリンクの10倍以上、一般的なコーヒーの3倍以上も含まれているケースがあるという。カフェインは、中枢神経を興奮させる作用があるため、眠気や疲労感の消失、思考力の増進、運動機能の亢進といった作用を得られる。この作用がリフレッシュや疲労回復感を呼び起こす。しかし、大量に摂取しすぎると、心拍数と血圧の急上昇が起こり、心臓に負担がかかる。場合によっては不眠、神経質、胃腸障害などの症状があらわれることがある。
過剰なカフェインが子どもの命を脅かす
特に重大な事故につながるのが子どものエナジードリンクの常用だ。ミシガン子ども病院の小児科医Steven Lipshultz氏らがまとめた報告によると、米国では2010年からの3年間にエナジードリンクの副作用で5000人以上が病院に搬送され、うち半分が6歳以下の子どもだった。症状は心拍の乱れや心臓発作、動悸など。これは、エナジードリンクに含まれる多量のカフェインによるものなのだという。この報告によると6歳の子どもの場合50mg、10歳で80mg、12歳であれば100mgのカフェインの摂取で何らかの中毒症状が出るという。
有名なエナジードリンクの「モンスター・エナジー」では500mlで160mg、「レッドブル」は250mlで80mgのカフェインを含んでいる。それだけでも摂取の許容量をはるかにオーバーしている。仮にコーヒー(1杯で100mg)、コーラ(330mlで32mg)などを常飲していたら累積カフェイン量はあっという間に跳ね上がる。
しかも、カフェインが厄介なのは摂取を続けると耐性ができてしまうことだ。毎日飲み続ければ、1週間から12日程度で耐性ができ、12~24時間経過すると、禁断症状を感じ始めるともいう。これがエナジードリンクの常飲につながる、
こうしたカフェインの害以外にもエナジードリンクに含まれる大量の糖分も問題だ。飲んだ後に血糖値が上昇するために元気になったように感じるにすぎないのだ。この手のドリンク剤には砂糖換算で20g、つまり3gのスティックシュガー約7本分にも相当する糖分が含まれるものまである。だから「即効性」があると感じる。これだけの糖分を子どもが摂取し続ければ、当然ながら肥満や糖尿病につながっていく。
エナジードリンクを飲んで致命的な副作用が出て、最悪死亡してしまう。こんな冗談のような話が現実に起きている。特に子どもを元気にしたいからエナジードリンクを飲まそうなど絶対考えてはいけない。
(文=編集部)