連載第4回 ありがとうの心が通う、幸せ介護食

介護食に適した母の好物「鰆の若菜蒸し」を食べながら語らう

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温かくて優しい味の鰆の若菜蒸し

 母がデイサービスに通い始めて、5ヵ月がたった。初めは行くことすらためらっていたが、今ではお友達もでき、おしゃべりや昼食後に行われるゲームなどを楽しみにしている。脳梗塞を起こした頃と比べると、見違えるほど元気になった。

 一方、私はというとストレスが少しずつたまり、心がモヤモヤしてきた。

 でも、私には兄弟姉妹がなく、夫も仕事が忙しいので、介護を代わってくれる人はいない。要介護3の母の介護は、私一人の肩にかかっている。友人にグチってはみても、みんな介護の経験がないから、「大変ね」と励ましてくれるだけ。

 モヤモヤはどうにも解消されず、ケアマネジャーさんに柑談してみた。すると、「ショートステイを利用したら」と提案された。母が承知してくれるか心配だったが、「1泊だけならいい」ということで、初めてショートステイを利用した。


鰆は介護食に適した食材

 翌日、帰宅した母は、「嫌だった。もう行きたくない」と不満げ。おいしいものを作って、食事しながら母の話にゆっくりと付き合うことにした。

 そこでメニューに選んだのが、母の好きな「鰆(さわら)の若菜蒸し」だ。蒸した鰆と長芋の上から銀あんをかけ、わさびを添えていただく。
 
 鰆は白身で柔らかく、味は淡泊でくせがないので、お年寄りや介護食には良い食材だ。栄養的にもDHAやEPAを多く含み、血栓の予防やがんの抑制効果などの働きがあると言われている。そして、良質のたんぱく質、鉄分を多く含み、カルシュウムの吸収を促進する効果のあるビタミンDの含有量が多く、骨の健康維持に役立つなど非常に優秀な食材と言える。

 鰆を長芋と一緒に蒸すので、非常に柔らかく食べられる。銀あんをかけることで冷めにくく、飲み込むこともスムーズになるので、噛む力の弱くなった人や飲み込み力が弱った人にもおすすめの料理である。

 もちろん、一般食でもおいしく食べられるので、介護食を作る手間が省け、介護される方も家族と同じものを食べる喜びがあるようだ。お箸をうまく使えない人にはスプーンで食べることもできる。ただ、やけどしない程度の熱さに温度を調節する必要があるようだ。

 温かくて優しい味の蒸し物を食べながら話をするうちに、いつのまにか母も私も穏やかな表情になっていた。


「鰆の若菜蒸し」の作り方
1.鰆は腹骨と小骨を取り除き、一切れを60gほどに切る。
2.それを塩と酒で下味をつけて少し置いたら、皮目を下にして8〜10分ほど蒸す。
3.その間に、皮を厚めに剥いた長芋を細かく刻み、つなぎに卵白と塩少々を入れ、茹でて刻んだ春菊を彩りに加える
4.蒸した鰆を器に入れて長芋を上にかけ、器ごと蒸し器に戻して、さらに4〜5分蒸す。
5.銀あんは、だしに塩、薄口醤油、みりんを加えて昧を調え、水溶き片米粉でとろみをつける。


連載「ありがとうの心が通う、幸せ介護食」バックナンバー

横田節子(よこた・せつこ)

家庭料理、介護食研究家。1953年、大阪生まれ。2000年秋、同居中の実母が脳梗塞で倒れ、介護のため、自宅での料理教室を閉鎖。2005年、母の介護中、母が食べる様子をヒントに『介護しながら作る介護食』(日本経済新聞社)を出版。同書の出版以来、介護食に関する講演、講習会、取材が多数。

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横田節子
睡眠障害治療の新たな幕開け!個人に必要な睡眠の「量」と「質」を決める遺伝子を探せ
インタビュー「睡眠障害治療の最前線」後編:筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・佐藤誠教授

前編『『人間の「脳」は7時間程度の睡眠が必要! 本当のショートスリーパーは100人に1人程度!?』』

ひとくちに睡眠障害といっても、さまざまな症状がある。1990年代後半から脳内に眠気を誘う「睡眠物質」を探す研究にスポットライトが当たり、2018年からは睡眠の質と量を決める遺伝子の解析も進められている。今回は睡眠障害について、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の佐藤誠教授に話しを聞いた。

Doctors marche アンダカシー
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医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

鈴木龍太

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

横山隆