連載第4回 いつかは自分も……他人事ではない“男の介護”

「コーヒー1杯入れたことがなかった」 想定外の困難を抱える男性介護者

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同居の主たる介護者の続柄別年次推移

 妻や老親を介護する夫や息子たちが増えている。たまの休日に妻や嫁のサポートをするサブの介護者ではなく、誰も代わってくれる人がいないというようなメインの介護者だ。そういった男性介護者の数はすでに130万人に及んでおり、主たる介護者の3分の1を占めている。

 身内の介護をしている男性は、ある日突然、自分が介護をせざるを得なくなったという場合が意外と多い。まったく予定外の出来事であり、それまで「コーヒー1杯入れたことがなかった」のに、炊事、洗濯、掃除、ゴミ出し、買い物、預金管理、役所への届け、そして実際の介護などなど、一切を引き受けなければならない状況になる。「通帳をどこにしまってあるかわからない、見つかったけど暗証番号がわからない」などということは珍しくなく、毎日、右往左往している男性の姿が垣間見える。

 ちなみに、この問題で少し優位に立っているのは、単身赴任経験者だ。一通りの家事のスキルを持っているので、いざとなってもあわてずに対処ができるのだという。
 

否応なしでメインの介護者に

 男性介護者の3人に2人は60歳以上で、3人に1人は40〜50代の働き盛りの世代だ。前者では老老介護による介護疲れや共倒れが懸念され、後者では介護による離職や家計破綻に不安が広がっている。

 料理ができずに、ヘルパー訪問の日以外はコンビニ弁当で済ませる人、NHKの料理番組で料理を覚えた人、7種のメニューで1週間のローテーションを組んでいる人など、やはり毎日のことだけに、食事の準備に苦労している人が多い。実際に介護疲れで奥さんともども入院した人もいた。介護により心を病んでしまった人もいた。

 日本で初めての「寝たきり老人実態調査」(全国社会福祉協議会)が行われたのは1968年。当時20万人と推定された寝たきり老人を介護していたのは、半数が子どもの配偶者(嫁)。それから40年以上を経て、男性も介護役割が振られる時代になった。

 68年に半数を占めていた子どもの配偶者は、今では12,8%にまで激減し、代わって伸びてきたのは夫や息子である。

 もはや男だろうが女だろうが、若かろうが高齢だろうが、仕事をしていようがそうでなかろうが、一切勘案されることはない。家族に介護が必要になったときにそばにいた者が、否応なく主たる介護者の役割を引き受けざるを得ないのだ。そして、介護しながら日々の暮らしをつつがなく送ることは、綱渡りのように危なっかしい。それが現代の介護の実情だ。


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津止正敏(つどめ まさとし)
立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。
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