>  >  >  > 40年も放置されたエボラ出血熱ワクチンの開発

エボラ出血熱が発見されてから、40年もワクチンが開発されなかった理由とは?

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莫大な費用と長い歳月をかけて開発した新薬が、お蔵入りになることも! mangosteen /PIXTA(ピクスタ)

  

「世界の人たちへのクリスマスプレゼントだ」とオバマ大統領が胸を張った。アメリカの国立衛生研究所が、エボラ出血熱のワクチンを開発し、2015年半ばには完成する見通しになったからだ。

 2014年、西アフリカで流行したエボラ出血熱は、欧米にも飛び火して世界中を騒然とさせている。有効なワクチンや治療薬がないため、致死率が高いことが世界の人々を恐れさせているのだ。

 クリスマスイヴにWHO(世界保健機関)がまとめた最新状況によると、西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国を中心に、感染および感染の疑いのある人は1万9497人で、このうち死亡したのは7588人。いったん罹患したら自らの免疫力や治癒力に頼るしか回復への道はない。

 スーダン(現在は南スーダン)とコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発見されたのは1976年と、それほど古いことではない。とはいえ、40年近くが経っている。これだけ医学が進歩している時代に、40年間もワクチンや治療薬が作られなかったのは意外だと感じる人は多いだろう。

 1981年に症例が確認されたエイズの治療薬がすでに開発され、罹患しても発見が早ければ、ほぼ100%治療できるのとは対照的だ。

国家プロジェクトとして動き出したワクチン開発

 

 一般的に新しい薬の開発には9~17年かかると言われている。費用は100億円規模。大手製薬会社でないと、なかなか手をつけられない。
 
 薬の開発は、まず、植物、動物、微生物から特定の働きをする物質を見つけたり、またそれを化学的に合成したりして、候補物質を作るところから始まる。次に、動物や培養した細胞に使って候補物質の効き目や安全性を確かめる。そして最後に、ヒトを対象に臨床試験(治験)を3~7年かけて行う。

 こうして開発した新薬は、だいたい10年間は特許が認められ、独占販売ができる。しかし、治験でヒトには効かなかったり、思わぬ副作用が見つかったりすれば、それまでつぎ込んだ開発費と10年以上に及ぶ年月は無駄になってしまう。

 最初の候補物質が最後に薬として発売される確率は約3万分の1と言われている。儲けも大きいがリスクも高い世界だ。もし、あなたが、大手製薬会社の社長だったら、エボラ出血熱の薬の開発に着手するだろうか?

 エボラ出血熱は、発見以来、中央アフリカの奥地で何度も流行を繰り返してきた。今回は25回目を数える。しかし、24回目までの感染者の合計は2387人(死亡1590人)。このうち100人以上の感染者が出たのは7回で、300人以上が3回。それ以外の14回は感染者は100人に達しなかった。

 つまり、これまでは、恐ろしい病ではあるが、奥地に封じ込めておくことができたのだ。ところが今回、西アフリカの都市部に広がったことで、初めて2万人に近い感染者がでているのである。

 2013年まで、エボラ出血熱の感染者は2500人に満たなかった。一方、エイズ患者数は全世界で3330万人(2009年)にのぼる。どちらも新しい感染症でありながら、治療薬の開発に差があるのは、こういう理由があるのだ。"市場"の小ささゆえに新薬開発にいたらないのが、いわゆるオーファンドラッグ問題だ。

 しかし、現在、アメリカをはじめ世界各国で、エボラ出血熱のワクチンや治療薬の開発が熱を帯びている。エボラ出血熱ウイルスに対して、民間の製薬会社に頼るのではなく、国家予算を投じて戦っているのだ。資本主義が動かない分野では、私たちの税金を投じての新薬開発が必要なこともある。
(文=編集部)

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