「エボラ出血熱」で日本の薬が救世主に? 富士フイルムが開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」に注目

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インフルエンザ治療薬がエボラ出血熱に有効?(Shutterstock.com)

 西アフリカでのエボラ出血熱の大流行はまったく衰えを見せない。世界保健機関(WHO)によると、疑い例も含めると5千人近くが感染し、2400人を超える人々が死亡した。

 現在、開発中のエボラウイルスの治療薬やワクチンは複数種類あり、既に患者に投与された治療薬としては、アメリカのマップ・バイオファーマシューティカルが、カナダ公衆衛生庁、アメリカ政府と共同開発中のZMapp(ジーマップ)がる。この治療薬は通称・抗体医薬品と呼ばれるモノクローナル抗体からできている。

 人間の体の中には、体内に侵入してきた異物を排除する免疫という機能があるのは周知の通り。異物を排除するため、免疫に関係するB細胞が、ウイルスなどに感染した細胞に特有の目印に結合する抗体を作る。この抗体がただ1種類でB細胞から作る場合、その抗体をモノクローナル抗体と呼ぶ。ジーマップはエボラウイルスに作用する3種類のモノクローナル抗体を含んだもので、タバコの葉になるナス科タバコ属の多年草・ニコチアナの細胞を使って抗体を産生する。タバコの葉を使うのは抗体産生のスピードが早く、大量生産にも向いているからだ。

 ZMappは今年1月に発見されたばかり。カナダ公衆衛生庁によってエボラウイルスに感染させたサルで有効と確認されたものの、ヒトでの投与実績はまだなかった。今回、医療支援のため現地を訪れて感染したアメリカ人医師2人とスペイン人司祭1人に試験的に投与され、アメリカ人医師は症状が改善したものの、スペイン人司祭はそのまま死亡している。その後、感染が流行しているリベリアでリベリア人とナイジェリア人の医師3人に投与されたが、このうちの1人も既に死亡した。

 まだ試験的なことや、タバコの葉を使ったとしても通常の化学物質のような大量生産ができないことも影響して、マップ・バイオファーマシューティカルは既に在庫は尽きていることを明らかにしている。

●インフルエンザ治療薬がなぜエボラ出血熱に効くのか?

 いま最も注目を集めているのが富士フイルムグループの医薬品子会社・富山化学工業が開発した抗インフルエンザ薬・アビガンだ。なぜインフルエンザの治療薬がエボラ出血熱に効くのか――。
 
 一般にウイルスはその複製に必要な遺伝子情報が組み込まれたDNAあるいはRNAをタンパク質の膜で包んだだけの極めて簡単な構造を持つ。このウイルスがヒトに感染すると、ヒトの細胞に寄生して自分のDNAやRNAをそこに送り込み、遺伝情報と必要なタンパク質を複製して新たなウイルスが作られる。これが繰り返されて体内でのウイルス量が増えると、病原性を持つ場合は様々な症状が出現する。
 
 インフルエンザはRNAがタンパク質の膜で包まれたものなのだが、アビガンはヒトに感染したインフルエンザウイルスのRNA複製に必要な酵素・RNAポリメラーゼの働きを抑えてウイルスの増殖を抑制する働きがある。エボラウイルスはインフルエンザと同じようにその遺伝子情報を持ったRNAをタンパク質の膜で包んだものであり、動物実験ではアビガンが効果を示すことが知られている。このためヒトでもエボラウイルスに効果を示す可能性があると考えられている。

●FDAがアビガンをエボラ出血熱の治療薬として承認へ

 同時にこの薬が注目される理由は効果以外にもある。アビガンは通常の錠剤で大量生産が比較的容易な点だ。前述のようにマップ・バイオファーマシューティカルのZMappは大量生産に向かない。だから、わずか10人に満たない患者に投与した時点で在庫切れとなっているのだ。これでは今回のような爆発的な感染では対応できない。また、患者の体液を介して感染しやすいエボラ出血熱の場合、錠剤の方が医療従事者の感染リスクを大幅に減らせるというメリットもある。

 富士フイルムの米国でのパートナー企業メディベクター(ボストン)が
この治験薬をエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、米食品医薬品局(FDA)と協議していると発表している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通しだ。

 しかし、薬である以上、副作用は必ずある。アビガンの催奇性があるため妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与や男女とも男性の服用後の7日間程度の避妊の必要がある。FDAが緊急承認したとしても、現実的にはその効果や副作用は未知数の部分があるのも事実。

 すでに富士フイルムは、2万人分のアビガンの在庫を保有すると言われ、菅義偉官房長官もWHOや医療従事者の要請により、超法規的提供の用意があると表明している。今回のエボラパニック鎮静化のカギを握るのは、もしかしたら日本かも知れない。
(文=チーム・ヘルスプレス)【ビジネスジャーナル初出】(2014年9月)

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