平安貴族の藤原道長も苦しんだ糖尿病......全世界の患者数は30年で13倍!!

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平安貴族も糖尿病に罹っていた!? alphabetMN /PIXTA(ピクスタ)

 日本が誇る世界最古の長編小説『源氏物語』。この物語の主人公「光源氏」のモデルとされているのが、平安時代中期の貴族、藤原道長だ。

 摂政・太政大臣を歴任し、時の権力者となった道長の死因は、糖尿病だと考えられている。同時代の貴族、藤原実資(さねすけ)の日記に道長の病状が記されており、「のどが渇いて水を多量に飲む」、「体が痩せて体力がなくなった」、「背中に腫れ物ができた」、「目が見えなくなった」など、糖尿病だと思われる症状が散見されるからだ。

 ところで、私たちの体の中に「島」があることをご存知だろうか? その名も「ランゲルハンス島」。すい臓の中にある細胞群で、島のような丸い形をしている。発見したのは、ドイツの病理学者、パウル・ランゲルハンス。この細胞群の中の「B細胞(β細胞)」で作られる分泌物=インスリン(insulin)はラテン語の島(insula)に由来しており、1893年、発見者であるランゲルハンスの名をとって命名された。

 インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪の細胞に取り込ませて、エネルギーとして使わせるなどの働きをする。糖尿病とは、インスリンの分泌や働きに不具合があるために、血液中に含むブドウ糖の割合(血糖値)が高い状態が長期間続くために生じる病だ。その結果、引き起こすさまざまな症状は合併症と呼ばれる。

 たとえば、腎臓の働きが悪くなって透析が必要になる。網膜に障害がおきて失明する。末梢神経が侵されて足のしびれや壊疽(えそ)を起こす。動脈硬化となり脳梗塞や心筋梗塞がおきる......。

 B細胞でのインスリンの分泌が足りない場合を「1型糖尿病」、分泌は足りているがインスリンの働きが衰える場合を「2型糖尿病」と呼び、日本では糖尿病患者の90~95%が2型である。2型の初期段階では、ほとんど自覚症状がないため、気がついたら深刻な合併症が進行していたということになりやすい。

もはや糖尿病は「金持ちの病」ではない

 

 糖尿病患者は、21世紀に入って全世界で爆発的に増えている。国際糖尿病連合(IDF)によると、全世界の患者数は1987年には3000万人であったが、2007年には2億4600万人、そして2014年には3億670万人と、30年近くで約13倍に増えた。世界人口の伸びは、1985年に48億6400万人で、2013年が71億6200万人と約1.5倍であるため、その急増ぶりは明らかだ。

 特に40歳から59歳という働き盛りで、2型を発症する人が増えている。2型は生活習慣病のひとつとされ、その原因として、肥満、過食、運動不足、ストレス、遺伝などが挙げられる。日本国内の統計によると、最も糖尿病による死亡率が高いのは徳島県で、日常的に車を使うことから来る運動不足と、食生活における野菜不足が原因だとされている。

 平安貴族の道長も、絵巻などに残されている姿を見ると丸々と太っている。権力者となった道長はグルメな食生活を送り、自らが出歩くことも減り、さらには、その地位を守るためのストレスもあったのだろう。道長の例に代表されるように、長きにわたり糖尿病といえば、お金持ちの病気という印象があったことも事実である。

 しかし、現在の世界情勢を見ると、糖尿病のイメージは変わりつつある。

 患者が多い国のナンバー1は中国、2位はインド。生活習慣病が多そうなアメリカは3位。以下、4位がブラジル、5位がインドネシア、6位がメキシコ、7位がエジプト、8位がドイツ、9位がトルコときて、日本は10位。世界のベスト10には、いわゆる新興国と呼ばれる国が多い。さらに全世界のランキングをまとめると、糖尿病患者の77%は低・中所得の国に集中しているという。

 世界的に豊かさのレベルが底上げされ、新興国の低・中所得者といえど食生活や生活環境が良くなった結果なのだろう。その一方で、先進国の富裕層は健康重視のライフスタイルにシフトしつつある......。もし現代に道長が生きていれば、寝殿造りの豪邸の中にスポーツジムを作り、庭には風雅な池や築山だけでなく、野菜畑も作ったかもしれない。
(文=編集部)

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