連載第2回 薬は飲まないにこしたことはない

薬で病気は治らない!? 生活習慣病は根治できない本当の理由とは?

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 不規則な食生活や運動不足、喫煙、アルコールなどの日常の習慣から生じる生活習慣病は、自覚症状がほとんどないまま進行し、たいていの場合慢性化してしまう。また、多くの人が「生活習慣病は、病院に行き薬を飲めば治る」と思い込んでいるため、さらに厄介なことになる。

 細菌やウイルスによる伝染病・感染症の治療では、一定期間の薬の服用は大きな効果を発揮し、症状も消失する。一方、生活習慣に起因する慢性症状は、服用期間中に抑制されたとしても、飲むのをやめるとまた出現する。この場合、薬は対症療法に過ぎず、根本的に治したければ自分で生活習慣を改善するしかない。

 しかし、多くの人が食生活の改善や定期的な運動などを面倒だと感じているため、安易に病院で薬をもらうという手段を選ぶ。特別な努力をしなくても、薬を飲めば血糖値も血圧も何とか正常値に近づくのだから、これほど楽なことはないだろう。だが、薬を飲み続けることは、異物を体内に入れ続けることだ。生活習慣病の症状を抑えるための継続的な服用は、体に弊害をもたらす危険をはらんでいる。

●薬は体に大切な酵素を浪費し、免疫力を下げる

 体への影響のひとつに、薬が酵素を大量に消費することが挙げられる。人間が生きていくうえで、体内にある酵素は、食べ物の消化、アルコールの分解、血液の産生、皮膚の新陳代謝など大切な役割を果たす。

 酵素には、もとから体に備わっている「体内酵素」と、食べ物から取り入れる「食物酵素」の2種類がある。さらに「体内酵素」は食べたものを消化・吸収する「消化酵素」と、身体を正常に動かす機能を保つ「代謝酵素」に分けられる。「消化酵素」と「代謝酵素」は互いに密接な関係にあり、前者を使いすぎると後者が不足してしまう。

 人間にとって異物である薬は、食べ物と同様に体内で消化・吸収されるが、体は異物の分解に慣れていないため、それらを効率良く行うことができない。さらに、薬の解毒をする必要もあり、より多くの酵素を消費することが必要になるのだ。

「消化酵素」を大量に使用すれば、連動して「代謝酵素」も減少する。代謝が悪くなれば、体温の低下と血流の悪化につながり、最終的には免疫力の低下をもたらす。血流が悪くなると、血液によって全身に運ばれる免疫機能を持つ白血球の働きが鈍くなってしまうからだ。体温が1度下がると免疫力は30%減るといわれており、病気を治そうとして薬を飲むのに、それが裏目に出てしまう可能性もある。

 頭痛薬を例にとってみよう。生活習慣病以外にもさまざまな原因が考えられる頭痛だが、ズキズキ・ガンガンという脈打つような痛みは、頭部の血流が増えることにより起こる。そのため、頭痛薬は血流を抑制して痛みを抑える働きを持つが、この薬の成分は頭だけに作用するのではなく、体のあちこちを巡って同じ作用を及ぼす。体中の血流が悪くなれば体温も免疫力も低下し、体本来の機能を妨げてしまう。そのため、頭痛薬を飲むことでさらに具合が悪くなる人もいるという。何とも皮肉な話だが、こうしたことからも痛み止めの安易な服用には十分な注意を払うことが大切になる。

連載「薬は飲まないにこしたことはない」バックナンバー

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士(米AHCN大学)、ボディトレーナー、一般社団法人国際感食協会代表理事、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。1959年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師として医療の現場に身を置く中で、薬漬けの医療に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を活かし、薬に頼らない健康法を多方面に渡り発信している。その他、講演、セミナー、雑誌等での執筆も行っている。最新刊『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』(光文社新書)が好評発売中。

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