寒冷地、豪雪地帯での「越冬入院」「越冬入所」は社会的入院と言えるのか!?

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厳冬の今年,高齢者の居場所が無い

 雪の多い北海道、北陸、東北地方などでは、冬の間だけ自宅を離れ病院や介護老人保健施設(老健)などに一時避難する「越冬入院」「越冬入所」と呼ばれる緊急措置が見られる。

 最低気温がマイナス10℃~20度になってしまうような地域では、独居の高齢者の命に関わる。そこで10月下旬~11月ごろから次の春が来る4月まで、長い場合には5月頃まで、越冬のために医療施設や介護関係施設に助けを求めて訪れるケースが多い。
 
 寒ければ暖房はどうしても必要。独居の高齢者の火の始末が不安だ。家族と同居していたとしても昼間は家族が仕事に出ているから、やはり火の元は不安だ。寒さで風邪を引きやすくなり、体力が落ちている高齢者にとっては辛い。急に冷えて、脳血管障害を起こしやすくなるのもこの季節だ。さらに豪雪地帯では雪かきが出来なければ命に関わり、凍結した路面で転倒する場合もある。
 
 ある介護老人施設によると、越冬入居を希望するのは、家族と同居してケースがほとんどだ。毎年必ず利用する常連さんと、その年だけの方の両方で、10人ほどの利用があるという。家族と同居はしていても、住宅が老朽化し暖房が効かない場合がある。お年寄りに、暖房の効いた安全な施設で過ごしてほしいという家族の思いと普段から介護で苦労する家族を気候が厳しい冬だけでも楽にさせてやりたいという、介護されている側の気遣いでもあるという。

 こんなケースもある。普段は通所リハビリを利用する高齢者が、積雪で道路が不通になるのを見越し、入所に切り替えてリハビリを継続することもある。逆に、年末年始の時期ぐらいは家族と一緒に過ごしたいとこの時期家出の生活を選ぶ場合もある。この時期、生活の局面がそれぞれの家庭で変化する。

「越冬入院」「越冬入所」に、寒冷地用に特別の医療費や介護保険料の加算があるわけでもない。しかし、こうした地域にある病院や介護施設では、やむを得ず日常業務として行われている。もちろん、介護認定で要介護度1以上とされている高齢者は、老健や病院の介護療養型医療施設病棟に入所できる。まだ認定を受けていない場合には、仕方が無いので、何かしら病名が付けられ一般病棟に入院する形になる。

社会的入院は社会の側に原因がある

 入院治療の必要はないのに、介護する家族がいないという家庭の事情や、介護施設が見つからない社会的理由による入院状態が続く「社会的入院」が、大きな社会問題に なったことがあった。

 その後、「社会的入院」を何とか減らし医療費の無駄をなくそうと国の政策は大きく舵を切った。在宅サービスなどの充実を図りながら、というお題目は掲げたが、現実にはそうした机上の理屈では対応できない場合があまりのも多い。

「社会的入院」はよくないことなのかもしれない。しかし、冬の期間じっと家にこもり、うつになったり、運動不足になったり、栄養不足で誰も知らないうちに亡くなっていたり、火の不始末から火事になったり、などなどのリスクがあることを想像すれば、ある程度の入院(避難)は認められるべきだろう。

 社会の側に原因があるから「社会的入院」と呼ぶのであり、福祉・住宅政策の遅れのツケを医療に頼って繕うせいで医療費が無駄にかかるのだ。まずは安心して暮らせるような、弱者に対する生活支援を充実させることが大前提だとは言えないだろうか。

 さらにいえば、こうした「越冬入院」「越冬入所」などを地域性の問題として頬かむりを決め込む行政の姿勢はやはり問題だろう。しわ寄せはそうした地域の施設で必死に働く人々、何よりもその地域の高齢者の負担となって現れる。
(文=編集部)

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