「高齢者虐待」の加害者は4割が息子! 暴力だけでなく心理的・経済的・性的な虐待、介護放棄も

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虐待は半数近くが実の息子から(Shutterstock.com)

 親の介護がまだまだ先だと思っている世代には縁遠いかと思われる高齢者への虐待問題。しかし、どっぷり高齢社会を迎えた日本では、今後ますます増加すると予想されている。すでに2006年には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」、通称「高齢者虐待防止法」が施行された。つまり、法律をつくってまで防止に努めなければならないほど、高齢者への虐待が多いということだ。

 特別養護老人ホームなどの高齢者施設で、職員による虐待をマスコミが取り上げる例もさほど珍しいことではなくなった。入所している高齢者が爪をはがされたり、熱湯をかけられたり、暴言を吐かれたり……これは複数のスタッフが勤務する施設だから見つかったということでもある。

 これに対し、虐待が見つけづらいのは在宅介護。特に、訪問介護・通所介護などの介護保険サービスを使っていない場合は、家族以外の目が高齢者に向けられることはきわめて少ないからだ。

 家族からの虐待といえば、長年の恨みが募った長男の嫁から受ける……という昭和のテレビドラマ的な発想はすでに古いものとなり、実の息子や娘から虐待されるのが現代の介護の実態だ。

●暴力だけではない、高齢者への虐待

 一概に「虐待」といっても、激しい暴力だけが虐待ではない。殴る蹴るといった身体的虐待のほか、言葉による脅しや侮辱などの心理的虐待、下半身を触るなどの性的虐待、本人の了解なしにお金を使う、本人が使いたいのに制限するなどの経済的虐待、そして、必要な世話をしないなどの介護等放棄がある。

 平成24年度の厚生労働省の調査によると、養護者による高齢者虐待を受けた人数は1万5627人。そのうち身体的虐待が65%を占め、次いで40.4%が心理的虐待、経済的虐待(23.5%)、介護等放棄(23.4%)と続く。そして、生命や身体、生活について重大な危険であるとされる虐待は1551人(9.9%)にも及んでいる。

 しかし、これはあくまで訪問ヘルパーなどからの通報で発覚し、表面化した数字だ。介護保険サービスを使わず、家族だけで高齢者を介護している場合は、高齢者に痣ができようが、排泄物にまみれていようが、公になることは少ないのだ。まして、存在そのものを無視するような心理的虐待は、他人が家に入ったとしても表面化しにくいだろう。

●息子が親を虐待する、その理由とは?

 先の厚労省の調査では、高齢者に認知症がある場合に虐待の深刻度が重くなるという傾向が現れている。そして最も多いのは息子からの虐待(41.6%)で、2人だけで暮らしている場合が特に危ないという。40~59歳の働き盛りの年齢が多い。男性の場合、「他人に弱みを見せたくない」との思いから、ヘルパーを家に入れることを拒むことが少なくないのだそうだ。また、それまでいたビジネスの世界と違い予定通りに進まない介護にイライラが募り、爆発してしまうことも。

 虐待に至る理由はさまざまだ。子ども時代に虐待された報復として、というのは少数派かもしれない。例えば、厳格な父に育てられた息子が、認知症によって変わって行く父親を見るのが堪え難くなったという場合もある。「言うことを聞かない」「何度も同じことを言う」などの言動からストレスが高じることも少なくない。失禁してしまった親に罰を与える意味で、着替えをさせずに下着が濡れたままにしておくといった例もある。

 また、親の介護のために会社を辞めたり、家族と離れて暮らさざるを得なくなったりするなど、「不本意なことをさせられた」「親のせいで将来が見えなくなった」などの閉塞感もある。男性の場合は、慣れない家事をこなさなくてはならないこともストレスになるのだろう。

 養護者による虐待から死に至った例(つまり殺人)は、平成24年度で27人となっている。

●自分の親を虐待しないで済む方法

 実の親への虐待は、決して他山の石ではない。今のところ親が元気でも、いつ何が起こるかわからないのが現代だ。交通事故や脳卒中などは、突然介護が必要になる代表選手であり、絶対にウチの親には起こらないと断言できるものではない。親の介護が必要になった時に、自分が親に虐待しないで済むにはどうすればいいのか。

 そのポイントは、自分だけ、あるいは家族だけで親をみるのではなく、多くの人にかかわってもらうことだ。在宅なら、介護スタッフはもちろん、兄弟姉妹、親戚、友人を巻き込んでシフトを組み、チームで対応する。あるいは、お金がかかるとしても、思い切って有料老人ホームなどの高齢者施設に入ってもらうという選択肢もある。

 在宅でも施設でも、介護にはお金がかかるもの。遠距離介護ならなおさらだ。親の介護もそうだが、自分が介護される立場になった時に、先立つものはお金である。そのためにも、何があっても仕事を辞めず、収入の道を確保した上でできる介護のかたちを探すべきだ。
(文=チーム・ヘルスプレス)【ビジネスジャーナル初出】(2014年10月)

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