畑仕事に励んでいる高齢者はうつ病になりにくい! 愛知県の医師グループが発表

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畑での作業が脳内の幸福物質を増やす miho/PIXTA(ピクスタ)

 女優の朝丘雪路さん(78歳)が老人性うつ病を発症し休養したというニュースは記憶に新しい。2013年秋ごろから症状が出て、今年4月の舞台公演を務めたが、ときには足元もおぼつかない状態で、いつも億劫な様子だったという。

 現在、日本では老人性うつ病が密かに増えている。認知症と間違われがちだが、認知症は症状がゆっくり進むのに対し、うつ病はそれまで若々しく活動的だった人が突然変わることが多い。不眠、食欲不振、倦怠感、判断力の低下、周囲への関心の低下、喪失感、不安感などが続いたら要注意。

 また、老人性うつ病患者の約6割が、発病前に退職や死別などを体験し、精神的なダメージが引き金になったという指摘もある。若年層のうつに比べて外的な要因の影響が大きいのだ。

 生活習慣や環境によって、高齢者のうつを予防することはできないのだろうか。そんな研究のひとつとして、「日常的に畑仕事をしている人は、していない人よりもうつになりにくい」という興味深い調査結果が、愛知県の医師たちから報告されている。

●畑仕事する・しないでうつ症状に10%の差

 この調査を行ったのは、豊田市岩神町にあるJA愛知厚生連足助病院に所属の医師らがつくる「健康ネットワーク研究会」。高齢化が進む中、主に認知症の人を地域全体で見守る支援体制を構築するために実施したものだ。

 今年2〜3月、豊田市旧郡部をはじめとする三河中山間地の2万人を対象に、日常生活の状況や精神状態などを75項目に渡ってアンケート。約6500人から回答を得ている。

 このうち65歳以上の約3200人の回答を分析したところ、「畑仕事をしていない」という人にうつ症状が見られる割合が男性で45.3%、女性で50.4%。それに対して、「畑仕事をしている」という人では、男性が30.6%、女性が37.1%といずれも10ポイント以上低かった。特に85歳以上で比較すると差はもっと顕著で、20ポイント近くに。また、畑仕事をしている人は重度のうつ症状が見られる割合も低かったという。

 日常生活との関連も大きい。畑仕事をしている人ほど、屋外での趣味を持つ率や、友人の家を訪問する率、預貯金の出し入れができる率も高かったという。同院医療情報室顧問の杉浦正士さんは、「日々畑仕事をすることが、身体的な機能の維持に役立ち、生きがいにもなっている」と話す。

●土いじりが脳の幸福物質を増やす

 

 実は、畑仕事がうつを改善することは以前から推察されてきた。そのひとつの要因が、精神の安定や幸福感を司る脳内神経伝達物質の「セロトニン」だ。不足すると落ち込みやストレスを感じやすくなり、うつ病の引き金になることもある。

 このセロトニンの分泌を活発にするには、規則正しい生活をして朝日を浴びることが効果的といわれる。つまり毎朝畑に出て、太陽の光をたっぷり浴びて作業をすることは、脳内の幸福物質を増やしてくれるのだ。

 さらに「土いじり」自体にも良い影響があるといわれる。英ブリストル大学のクリス・ロウリー博士の研究によると、土壌に生息するバクテリアの一種には、脳内のセロトニンを増やす効果が認められたという。

 ほかにも自然による癒しや、作物を育てる充実感など、さまざまな効果が考えられる。今回の大規模調査では、毎日の畑仕事とこころの関係が、改めて確認された形だ。

 都市部では難しい面もあるが、日の出と共に行動し、日の入りと共に休む生活スタイルに少しでも近づくことが、こころの健康には大切なのだろう。
(文=編集部)

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