不安に弱いといわれている日本人、それは不安遺伝子によるもの?

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不安やうつは遺伝子のせいだけなのか?

 うつ病や不安障害の患者数は年々増加しており、日本では160万人以上という報告(平成23年 厚生労働省調べ)がある。うつ病の発症要因にはさまざまあるが、脳内のセロトニンという神経伝達物質が関係するともいわれている。
 
 このセロトニンの働きに関与するのが、セロトニントランスポータというタンパク質である。このセロトニントランスポータは、神経終末で放出されるセロトニンの再取り込みを行い再利用する働きを持っている。

 最近の遺伝子研究によると、このセロトニントランスポータの遺伝子転写をコントロールするDNAのプロモータ領域には、S型とL型の2タイプがあり、短い方をS型、長い方をL型と呼んでいる。私たちは父親、母親からこの両方の型を一つずつ受け取っており、SS型、LS型、LL型のいずれかの組み合わせとなっている。

 セロトニントランスポータ遺伝子とヒトの性格に関するある調査では、「S型の遺伝子を持つ人は、神経質な人が多い」というものがあり、また、「S型を持っている人が、失職や離婚など人生の上で大きなショックがあるとうつ病になる確率が上がる」という調査もある。いまではこのセロトニントランスポータ遺伝子のS型は、世界中で「不安遺伝子」と呼ばれ、遺伝子と性格や精神疾患の関連の研究が進められている。

人種と不安遺伝子の関連

 人種と不安遺伝子の関連を調べた調査では、LS型、SS型を含めたS型を持っているのはアメリカ人では約68%なのに対して、日本人では約96%もいる。日本人は世界一セロトニントランスポータのS型遺伝子をもつ人種であるという結果が出ている。

 このデータをもって「日本人は不安に弱い」「日本人にうつ病が多い」という結論を導き出す学者もいる一方、性格を作るのは遺伝子30%、環境要因70%だから一概に日本人は不安に弱いなどとはいえないと唱える学者もいる。いまだに、どちらもコンセンサスを得られていない。

 私たちも、うつ病で自殺をしてしまった人の子どもが、またうつ病を発症したと聞くと、何となく「遺伝のせいか」などと妙に納得してしまったりするが、ミクロの遺伝子研究を踏まえたエビデンスの前では肯けるものがある。

実数は環境要因などで変わる

 では本当に、日本人にはうつ病や不安障害が多いのだろうか? オーストラリアのある大学の調査によれば、世界的な比較では、アフリカや中近東でうつ病患者数が多い国々があり、特に日本が飛びぬけて多いということはないということだ。もちろん各国の経済状態や、生活環境などを相対化して計算する必要もあるが、OECD主要加盟国でも日本は低い方という結論が出ている。

 日本はうつ病患者数が人口比で世界的にも多くないのに、自殺者や自殺を考える人がなぜ多いのかという検証も、今後は必要ではないだろうか。不安遺伝子など遺伝子レベルやミクロの研究だけではわからない「こころの動きの探求」が、またヒトの情動の不思議さを一段と深めている。
(文=編集部)

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