連載第1回 恐ろしい危険ドラッグ中毒

危険ドラッグに麻薬・覚醒剤の成分も混入され、さらに危険度がアップ!

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下段が多くの死者をだしたHeartShot 厚生労働省HPより

 2014年11月4日、36歳男性が横須賀市内の自宅で9時間余り大暴れして、両親を殺害したとのニュースが飛び込んできた。危険ドラッグを吸引して興奮状態となり、凶行に及んだのであった。使用した危険ドラッグには、より重篤な幻覚、幻聴、興奮を惹起する大麻、覚醒剤の成分も検出されたとのことであった。 
 
 近年いわゆる危険ドラッグの乱用患者が爆発的に増加しており、患者自身が幻覚、妄想、痙攣、意識障害、呼吸循環障害、自殺企図などの身体的、精神的有害事象に直面し、使用しての危険運転による人身事故、暴力や殺人事件などの社会的問題も数多く発生している。

 2014年1月より9月まで既に危険運転での検挙および逮捕数が87件、使用後の死亡例が71件も報告されている。ここで危険ドラッグについての概観や歴史的変遷を解説しながら、具体的な中毒患者と接して対応した救急医療現場での経験例を報告してみたい。

●危険ドラッグの流行はこれまで3つのステージに分かれる

<危険ドラッグとは> 
 麻薬などに類似した幻覚、妄想、興奮作用など心身の健康を阻害する可能性の大きい薬物(化学物質)のことである。代表的危険ドラッグは、その化学構造の有する骨格の違いによって、興奮作用が主体であるカチノン系化合物と中枢神経抑制作用があるカンナビノイド系化合物に分類される。 

<危険ドラッグに関する歴史的変遷> 
 現在に至るまでの経過は3つのステージに分類される。 
<First Stage~マジックマッシュルーム>
1988年頃より露店、インターネット上で観賞用植物と称して販売された。ヒトヨケ タ科、ヨモギタケ科のキノコ。成分サイロジピンによる幻覚、知覚異常を引き起こす。2002年に「麻薬原料植物」に指定(麻薬および向精神薬取締法)され、社会問題としての終息を迎えた。 
<Second Stage~5MeO-DIPT、MDMA、2C Series>
First Stageの終息前後より、麻薬や覚醒剤の化学構造式の一部を変換して、類似効果を有する物質が、ヘッドショップ(喫煙具の専門店)、アダルトショップ、インターネット上で出回った。2007年に31種類の「違法ドラッグ」および1植物の「指定薬物」と処遇されたことにより(麻薬および向精神薬取締法)、使用者の減少が認められ、終息したかに見えた。 
<Third Stage~危険ドラッグ(脱法ハーブ)>
2011年より乱用によっての事件、事故、救急搬送、精神科受診報告例があった。翌年に一大社会問題化した。製法は複雑化した。「包括指定」により終息が期待されたが...。
 
 そして、現在は横須賀で起きた殺人事件のごとく、カンナビノイド系、カチノン系化合物に加えて麻薬・覚醒剤の成分も混入され、使用者にとっては一層重篤な症状が引き起こされ、社会的にもより深刻な事態に直面する危険性が増してきている。たThird Stageの終息を見ないまま、更に混沌としたFourth Stageの幕開けかと危惧されるである。 
 
 今後、患者の具体的な症例を中心に据えながら医療現場に即した視点で危険ドラッグについての諸問題を解析して、今後の改善に向けての提言を行う予定である。


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横山隆(よこやま・たかし)

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長。2015年8月に同病院退職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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