連載第1回 ここまで治る! 放射線治療

放射線を知ることで無用な恐怖を払拭、こんなにある検査の有用性!

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PET診断(肺がん)による画像。ブドウ糖が目印になる

 日本人ほど、放射線に対して怖さを実感している国民はいないと思う。それは広島・長崎の原爆投下やビキニ環礁水爆実験、最近では2011年3月11日の東日本大震災時の福島第一原発事故を体験しているからだ。放射線は怖いものだが、医療界においては使い方次第で有力な検査・治療の担い手となっている。

●CT検査で使われる放射線の被曝量

 検査でよく使われる「CT(Computed Tomography)」は、別名「コンピュータ断層撮影」と呼ばれ、有益な検査法だが放射線を使っている。1回の頭部CT検査で約2ミリシーベルトの放射線被曝がある。我々は宇宙線など自然界から1年間に約1.2ミリシーベルト程度被曝している。つまり、1回の頭部CT検査は、2年分の被曝量に相当するということだ。

 特にお子さんは放射線感受性が高いので、放射線を使った検査はできるだけ控えた方がいいだろう。メルボルン大学のマチュース博士は70万人を対象とした住民研究で、幼小児期や青少年期にCTスキャンを受けた者は、そうでない者と比べ、全がんの発生リスクが24%上昇するとしている。またCTを1回施行するごとにがんの発症リスクは16%上昇するという研究結果を『BMJ(イギリス医師会雑誌:British Medical Jounal.2013)』に発表している。

●がんの早期診断や治療に使われるPET(ペット)検査

 がんは何といっても早期診断・治療が大切だ。PET検査を受ければ、無症状のうちにがんを発見することが可能である。PETとは陽電子放出断層装置という意味で、Positron Emission Tomographyの略である。特殊な薬(FDG)でがん細胞に目印をつけるというのがこの検査の特徴だ。

 PET検査では、検査薬を点滴で人体に投与することで、全身の細胞のうちがん細胞だけに目印をつけることができる。専用の装置を使えば、がん細胞だけを見つけることが可能だ。これにより、従来の検査に比べごく小さな早期がんの細胞まで発見することができるようになった。

 PET検査は、がん細胞が正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込むという性質を利用している。ブドウ糖に近い成分のFDGを体内に注射し、しばらくしてから全身をPET装置で撮影をすると、ブドウ糖(FDG)が多く集まる部位がわかり、がん発見の手がかりとなる。FDGはフルオロデオキシグルコースの略で、ブドウ糖(グルコース)に似た化合物だ。

 特に18F‐FDGは、18F(フッ素)という陽電子(ポジトロン)を放出する放射性同位元素で標識した薬剤で、体にはブドウ糖と同じように取り込まれる。ブドウ糖と違う点は、18F‐FDGは腎臓、尿管、膀胱を経て尿と一緒に体外に排泄される点だ。従来のレントゲン(X線)やCT、MRIなどの検査は、描出された形からがんを見つけるが、PET検査は、このように細胞の性質を調べてがんを探し出すのである。


連載「ここまで治る! 放射線治療」バックナンバー

高橋伸明(たかはし・のぶあき)

福岡記念クリニック院長。脳神経外科医。還暦を期にメスを置き、新たにガンマナイフを駆使した治療を精力的に実施。ガンマナイフ治療および放射線治療・検査の第一人者。1973年、鳥取大学医学部卒業後、北野病院、国立循環器病センター(ともに大阪府)を経て、1983年、小文字病院(福岡県)副院長(脳神経外科部長)。福岡記念病院副院長(脳神経外科部長)を経て、同院院長、2009年に同院名誉院長に就任。2014年より現職。

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