コロナ感染者の急増、社会の動きを止めないために求められること

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89%の症例ではウイルスが分離されるのは6日目まで

 オミクロン株の感染性について感染研が速報で報告した(1月5日)。オミクロン株の感染者は1月4日の時点で全例入院措置が取られ、退院基準も厳格に規定されていて、PCRもしくは抗原検査で連続2回陰性とならなければ退院できない規定となっていた(1月5日に基準を緩和)。

 このため国立感染研は12月22日までに確認されたオミクロン株感染例21例におけるウイルス排出期間を明らかにする目的で、経時的にリアルタイムRT-PCR(原文)およびウイルス分離試験で追跡して解析をおこなった。21例の内訳では驚くことにワクチン未接種の未成年者2例を除けばそれ以外のすべてが2回のワクチン接種を受けているブレイクスルー感染であることだ(さらにこのうちの2人はブースター接種も受けていた)。無症状は4例と少なく、残りの17例は軽症ながら症状がある症例だった(ただし、2回目のワクチン接種から6か月以上経過しているかどうかの記載はない)。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10880-covid19-66.html

 解析結果では診断日および発症日のどちらから起算日しても10日以降はウイルスが分離されず感染性がないという結果だったが、PCR検査では14日以降でもRNAが検出された。この結果はオミクロン株以前のコロナ感染の特徴と大きな変わりはない。注目すべきは診断後7日以上経過した時点(「7-9日目」のグループ)でウイルスが分離されたのは2例(11%)のみであったことだ。つまり89%の症例ではウイルスが分離されるのは6日目までということになる(「3-6日目」を同一グループとして解析しているので、5日目を境にした統計は不明)。この結果は「感染の成立は5日目までで90%」というCDCのデータとほぼ一致している。

思考停止のコロナ対策、抜本的な見直しが必要

 日本ではオミクロン株が出現してもなお2年前と何ら変わらない、思考停止のコロナ対策が漫然と繰り返されている。市中感染が明らかになったらその時点で厳しい検疫は意味がなくなり、検査で確定された感染者は氷山の一角でしかなく、そのような感染者の一部に対してだけ入院隔離政策を徹底しても焼け石に水だ。

 しかも早くも入院隔離のキャパシティーがなくなる見通しで、それを理由に宿泊施設や自宅隔離にシフトせざるを得なくなっているのが現状だ。感染者が爆発的に増えてしまった段階では、罹患者には必要最低限の期間だけ自宅待機をしてもらえばいいし、症状ない濃厚接触者まで長い期間拘束して社会活動を抑制しなければいけない理由はどこにもない。日本でも感染者および濃厚接触者の隔離期間を短縮することを考慮すべき段階に来ているのではなかろうか。可能であるならば迅速抗原キットの増産や市販キットの認証を急いで、検査が陰性であったものから隔離を解除したらいい。

 これからのコロナ対策で大事なことは検査を受けたい人がスムーズに検査を受けられ、診察や入院が必要な人が速やかに医療の恩恵を得られるようにすることで、医療体制の整備の必要性が叫ばれているのに一向に改革する気配がない。また、国民の行動規制を強化してもそれで得られるものは少ないことを認識すべきだ。感染経路の主体は家族、友人、職場の同僚であって、飲食店での感染の割合はむしろ少ないことがわかってきているにも関わらず、家族や友人との接触や職場の同僚との接触を断つような指示は出せないから、行政として規制できる唯一の対象として飲食店が規制の集中攻撃を浴びているのが今の状況だ。

 また、コロナが流行し始めた当初、多くの高齢者が命を落としたが、その半数以上が高齢者施設や医療施設等に入所・入院している人達だった。現在これらの施設でクラスターが発生していないことが重症・死亡者が少ない理由の一つであって、何もウイルス毒性の変化だけで議論するのは片手落ちだ。若年層ではほとんどが無症状か軽症で、重症化するのは高齢者(および疾病を抱えてるひと)であるということは今に始まったことではない。

 若年層は普通の経済活動に戻って、インフルエンザに対する対応(発症後5日間の自宅待機)と同様にひとたび感染した場合は検査で確認して最低限の自粛をするという構図にしたらいいし、そのためにも検査体制のさらなる拡充を図ることが絶対条件となる。長く検査ができない状態が続いたために検査をしないことに慣らされてしまっていたり、強い隔離政策が検査を受けるモチベーションを低下させていることも大きな問題で、このことに対する改善策が必要だ。大切なことは肝となるポイント(高齢施設への感染を防ぐ対策~ブースター接種、入所者・スタッフのルーチン検査)だけは怠りなく励行することだ。社会の動きを止めないためのコロナ対策の抜本的な見直しが今求められている。(文=和田眞紀夫)

和田眞紀夫(わだ・まきお)
わだ内科クリニック院長

※医療バナンス学会発行「MRIC」2022年1月11日より転載(http://medg.jp/mt/)


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