再生医療でペットの生命はどこまで救えるのか?

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ペットの再生医療の現状と具体的治療

 それではペットへの再生医療の現状はどうなっているのだろうか。
「最も注目されるのがやはり間葉系幹細胞(MSC)でしょう。そのほかリンパ球療法、樹状細胞療法、PRP療法などがクリニックレベルで行われています。人間では科学的に効果が認められた療法であっても、動物ではあくまでも臨床研究の段階と言えます」と平野院長。

 それぞれ代表的な再生医療について見ていく。

➀間葉系幹細胞(MSC)療法~細胞療法
 MSCは骨髄、臍帯血、脂肪組織、胎盤などさまざまな組織からも採取することが出来るため、ヒトでも再生医療の細胞ソースとして多用されてきた。脂肪細胞などから幹細胞を取り出して培養、再び体内に戻す治療方法だ。点滴による静脈内投与や注射などによる局所投与が一般的で、その投与効果としは炎症抑制、鎮痛、免疫調整や免疫抑制などが期待されている。

 ちなみに組合が提供するMSCの対象疾患としては有効性が示唆されるのがイヌで14疾患、ネコで12疾患としている。
※同組合にて再生医療が受けられる疾患(参考)
https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2021/news_0210707.html

「MSCの供給は、製薬会社の幹細胞製品、組合から会員に供給されるもの、そして当院のようにラボを持ち自力で確保する方法の3本建てになっています。この3つで治療料金が数万円から20万円以上と開きがあります。一部の獣医師にとって自力で確保しなければならない不安と責任、品質チェックの必要性から解放されるという面がありますが、料金面のばらつきは利用者にとっては選択が難しいところです」(平野院長)

➁活性化自己リンパ球移入療法~免疫療法
 体内の免疫の力を強めることで、がんの発症や進行を抑える治療方法は免疫療法に分類される。

「当院では自家リンパ球療法にずっと取り組んでいます。これまで200程の投与例があり生活の質が大きく改善したケースを数多く見ています。採血した血液からリンパ球を取り出し、リンパ球の活性化・増殖を行ない再び点滴で体内に戻します。このことで免疫力を高めることができるのです。がん治療の補完療法として、QOLの維持が期待できれば実施しています。現状では製剤がないために培養施設を持っているクリニックの獣医師がドナーを見つけて採材・培養、有償の臨床研修としておこなっています」(平野院長)
 
③樹状細胞療法~免疫療法
 樹状細胞療法も免疫療法の一つで、採血した血液から樹状細胞となる単球を取り出し、樹状細胞を培養。この樹状細胞に手術などで採取したがん組織を認識させ、その樹状細胞を再投与すると、投与された樹状細胞がリンパ球にがんへの攻撃命令を出すもので、がんに対して特異的な免疫を活性化させる治療法だ。

④PRP療法
 自己多血小板血漿(PRP)療法とは、血小板に組織損傷を修復するサイトカイン(成長因子)が豊富に含まれている特性を利用し、組織の創傷治癒を促進する治療法。採血した血液から血小板を豊富に含む多血小板血漿を分離し、液状やゲル状で患部に投与する。主に骨折での癒合不全、皮膚欠損で皮膚再生、靭帯損傷などが適応となる。

あくまでも標準治療が原則、獣医師と十分な話し合いを

 こうしたペットに対する再生医療を利用者はどのように考え選択すべきなのだろうか。

「現状ではまだまだ臨床獣医師のアイディアで代替医療との組み合わせなど様々な治療が行われています。私はあくまでも原則標準治療をすべきだと思っています。そのうえで補完治療が必要な場合、標準治療の効果がない場合、QOLの改善が見込める場合などで再生医療を検討しています。本当に患者のためになっているのかという視点は必須だと思います。その辺はよく獣医師と話し合ってほしいと思います」と平野院長はアドバイスする。

 さらに今後のペットの再生医療に関して。
「当院のようにラボを持ち自力で再生医療を行う場合、品質と安全性の確保が絶対条件となるので臨床培養士などの専門職が必要になってきます。組合などの細胞デリバリーでもそうした人材の確保が理想的です。現在、看護専門学校でも細胞培養が基礎教育となり始めています。さらに、愛玩動物看護師法が成立し獣医師を補助する動物看護師が国家資格となります。動物医療におけるコメディカルの充実が一つ目の課題です。

 再生医療では今後、第三者委員会や倫理委員会の設置なども求められてくるでしょう。ヒトとペットともに高齢化する社会の中で、ペットに医療費をどのぐらいかけることができるのか、それが適正なものであるのかどうか、社会的なコンセンサスが必要になってきます」と指摘する。
 
 日本には動物病院が約12,000、最近までそのうち培養施設を持つ約200病院が再生医療にかかわる状況だったが、製薬会社の製材や組合のデリバリーが本格化すれば、再生医療のすそ野はさらに広がっていくと予想されるという。確かに平野院長の言うようにペットへの再生医療は大きな転換期にあるようだ。
(文=編集部)

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平野由夫(ひらの・よしお)
ひらの動物病院院長
一般社団法人日本獣医再生医療学会副理事長
農林水産省動物再生医療等製品・バイオテクノロジー応用医薬品薬事審議会委員
農林水産省動物用医薬品再評価調査会委員


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